ASP・SaaS白書にみるクラウド市場の新勢力
11月20日20時43分配信 ITmedia エンタープライズ
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| 「ASP・SaaS白書2009/2010」を携えて記者会見に臨むASPICの河合輝欣会長 |
2003年、2005年に引き続き3回目の発行となるASP・SaaS白書は、副題を「クラウドコンピューティング時代の主役へ」とし、進化を続けるASP・SaaSの実態、動向を明らかにしている。
ASPICは8月28日に開いた記者会見で、その内容について説明した。いくつか興味深い調査結果が示されているので紹介しておきたい。ちなみにASPICでは、クラウドコンピューティングを「ASP・SaaSの集合体」と定義付けている。したがって、以下の調査結果もそれを踏まえてみていただきたい。
まず、ASPICの推計によると、2009年のASP・SaaS関連の市場規模は約1兆円。このうち75%は、データセンター市場(ハウジング、ホスティング)が占める。
今後は、現状で25%のアプリケーション市場が急速に拡大していくと予想され、2015年頃にはアプリケーション市場がデータセンター市場と拮抗するようになる。その結果、ASP・SaaS関連の全体市場規模は、2012年に2兆円規模、2015年には3兆円規模に拡大するとしている。
利用者動向としては、現在の国内における企業のASP・SaaS普及率は17.5%に達しており、従業員5人以下の企業を除くと30%にまで至っている。しかも利用者の60%弱は継続利用を強く考えており、ASP・SaaSの本格的な普及が体感できる状況になってきたとしている。
アプリケーションのタイプからみると、特にグループウェアなどの支援業務系アプリケーションの普及率(19.3%)が高く、経理・会計、営業支援などの基幹業務系アプリケーションの普及率(11.4%)も着実に伸びている。
企業の規模別では、現状では基本的に大企業の方が中小企業よりも、ASP・SaaSの利用割合が高い。基幹業務系アプリケーションにおいては、生産支援、CRM、営業支援などでその傾向が顕著に出ている。
一方、支援業務系アプリケーションについては、大企業と中小企業の利用割合に大きな差がない。つまりASP・SaaSは支援業務系アプリケーションを中心として中小企業にも浸透しており、中小企業が大企業と対等なICT環境のもとでの市場競争機会を獲得できる環境が整いつつあるとしている。
そして利用者がASP・SaaSを導入するメリットとしては、「安全・信頼性の確保」「コストの直接的削減」「迅速かつ自由度の高い経営」「事業・売り上げの拡大」「市場競争条件の改善」といった5つが挙げられるとしている。
●異業種参入がクラウド市場の新たな勢力に
一方、事業者動向としては、2009年6月時点で、国内でASP・SaaSを提供している事業者数は約1500、提供されているサービス数は約3000と、ASPICでは推定している。
ASP・SaaS事業者のサービス提供業種をみると、製造業、情報通信業、卸売・小売業への提供割合が高い。さらに詳細にみると、基幹業務系アプリケーション分野においては、CRM、営業支援、販売支援・管理、受発注システム、給与計算などを提供する事業者の割合が大きい。また支援業務系アプリケーション分野では、文書管理、メール配信・アドレス帳管理、情報共有支援をサービス提供する事業者の割合が大きい。
事業者のASP・SaaSの年間売上高(2007年度実績)は、全事業者の約50%が5000万円未満、約30%が1〜5億円、約20%が5億円以上。概ね5000万円未満と1億円以上とで事業者数が二分される傾向にある。また2007年度でみると、売り上げ増の事業者数が約70%に達している。
さらに、約80%の事業者がすでに他社と連携しており、さらなる強化を志向している。連携の内容は、アプリケーション間の技術連携(約45%)に留まらず、アプリケーションとプラットフォーム間の技術連携(約40%)、販売連携(約35%)など多岐にわたっている。
さて、この事業者動向で筆者が注目したのは、ASP・SaaSに新規参入した事業者のうち、全体の半数近くはASP・SaaSを除くICT分野からだが、約30%がICT分野以外からという調査結果だ。後者にはサービス利用者からの移行組も含まれる。
ASPICによると、利用者の勘所を押さえたノウハウを積み上げてASP・SaaS事業に新規参入し、競合他社との圧倒的な差別化により顕著な成功を収めている一般事業者も出始めているという。つまり、異業種参入がクラウド市場の新たな勢力になりつつあるのだ。
先週25日、日本オラクルが開催した「Oracle Database Summit」で、クラウドをテーマにユーザー企業によるパネルディスカッションが行われた。その詳細については関連記事を参照いただくとして、その席でパネラーの1人が語ったコメントが印象深かった。
「クラウドの有効活用法については、ぜひベンダーにもより良い提案をお願いしたい。だが、既存のベンダーにとってクラウドは、儲からなくなる構造になるので、果たして期待できる提案が出てくるかどうか。そう考えると、クラウド市場ではベンダーサイドのプレーヤーの顔ぶれが大きく変わるのかもしれない」
異業種参入がクラウド市場の新たな勢力になりつつあるのは、この見方と同根だろう。既存のベンダーにとってクラウドは、まさしくサバイバルの「ふるい」にかけられていることを意味している。【松岡功】
最終更新:11月20日20時43分



