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ロシア愛国主義に翻弄される「北方領土」 整備を進める本気度は?

THE PAGE 2015/9/9(水) 11:00配信

 ロシアが北方領土の開発を進めています。先月22日のメドベージェフ首相をはじめ、今月に入って農業相や運輸相が択捉島を訪問し、島の整備状況を視察しています。一方で、プーチン大統領は極東地域の土地を国民に無償で分け与える法案の立法化について言及するなど、日本政府に対する「けん制」の動きが目立ちます。ロシアの北方領土整備は、どれくらい本気なのでしょうか。ロシア問題に詳しい拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授が解説します。

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 ロシアのメドベージェフ首相が8月22日に北方領土の択捉島を訪れ、「クリール(諸島)はロシアの一部であり、われわれは今後も訪問を続ける」などと日本に一切配慮しない強硬発言を行い、日露関係が後退しました。クリール諸島とは千島列島と北方領土のロシアでの呼称。ロシアは現在の「クリール(千島)社会経済開発計画」を来年から10年間継続することを決めており、実効支配を強化する構えです。しかし、ロシアの経済危機や汚職・腐敗など計画をめぐる問題も少なくありません。

 ロシア政府が7月の閣議で承認した新しい開発計画は、現行計画(2007-15年)が今年で終了することから、それを延長して千島のインフラ開発を図るものです。全30島近い千島列島のうち、人が居住しているのは北部のパラムシル島、北方領土の国後、択捉、色丹 の計4島だけで、千島開発計画とは事実上、北方領土開発といえます。

 現行の計画でロシアは280億ルーブル(476億円)を投じて、空港や港湾整備、道路整備、住宅や病院、学校建設を行ってきました。

 メドベージェフ首相が署名した新計画(16-25年)は投入予算を700億ルーブル(約1200億円)に増加し、輸送、水産、観光、鉱業など産業分野を強化し、併せて教育や医療などサービスも改善させるとしています。700億ルーブルのうち4割は連邦予算から支出するそうです。

 ガルシカ極東発展相はこの閣議で、税制や関税免除、インフラ建設など投資環境を整備した新型特区を千島諸島にも適用する方針を示し、北方領土開発を優先的に行う意向を明らかにしました。

 また、(1)10年間で12万平方メートルの住宅を建設する、(2)8つの学校・幼稚園を新設する、(3)アスファルト道路を計42キロに拡張する――と述べ、こうした生活環境の改善により、「25年までに千島の人口を25%増やし、2万4000人以上にする」と強調しました。

 閣議では、メドベージェフ首相が「社会経済発展計画に沿って、民間用だけでなく、軍事インフラも同時に進める」と強調し、これを受けてショイグ国防相は、「国後、択捉で新しい軍事拠点の建設を進めており、年末までに終了し、部隊を再編する」と述べました。

 こうして、ロシアは北方領土を戦略的要衝とし、軍事、経済両面で長期的に開発しようとしています。

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最終更新:6/17(金) 11:41

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