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育休明けに与えられたのは負担の軽い仕事…「左遷」されたような気持ちに

西日本新聞 1月7日(木)17時30分配信

 産後5カ月の育休明けに与えられたのは、以前より業務負担の軽い仕事だった。会社の配慮はありがたかったが、「左遷」されたような気持ちになった。
 TOTO(北九州市)の田中江美さん(49)は、男女雇用機会均等法がスタートした翌年の1987年に一般職で入社した。92年には育児休業法が施行。同社が女性活躍の場を広げようと職務変更や育休を制度化した過渡期。田中さんは「総合職をしてみない?」「休んでみない?」と背中を押されてきた。
 34歳になると課長昇進を打診された。2人目の子はまだ3歳。家のことがますます行き届かなくなるだろう。それに「男性とは経験した苦労の質が違う」自分に務まるか不安だった。
 女性が出産後も働き続ける中で、産休というブランクは避けられない。しかし復帰後も育児や家事が重くのしかかり、企業の多くは子育て期の女性に業務負担を掛けないよう配慮する。そのことで「自分は経験不足」と昇進をためらう女性も少なくなかった。
 田中さんは2014年に総務部長に就いた。後輩たちには「『できなかったら』を考えるのでなく、与えられる役割は積極的に経験して」とエールを送る。

<男女雇用機会均等法30年>均等って何?役割意識 男性にもずしり

「女性部下のマネジメントに試行錯誤」

 働き続ける女性が増えた今、状況は変わったのだろうか。
 「21世紀職業財団」(東京)が14~15年に、女性活躍推進に取り組む企業10社の若手社員(03~13年入社)に行った意識調査では、「管理職になりたい・まあなりたい」と回答した男性は70・9%、女性は31・4%と大差があった。女性の9割以上が子育てをしながら働くことに不安を感じ、理由に「職場に迷惑を掛けそう」「子どもと過ごす時間が十分に取れるか」「時間外勤務や不規則勤務が多い」などを挙げた。
 また同時に行った管理職調査では、「責任の重い仕事は女性よりも男性部下に与える・どちらかといえば男性に与える」「女性をどう育成したらよいか分からない・まあそう思う」がともに3割を占めていた。
 同財団は若手社員のキャリア展望について「男性は明確に仕事に主眼を置いているが、女性は育児との両立がイメージできず、管理職昇進を描けないでいる」と分析。「管理職は女性部下のマネジメントに試行錯誤している」と課題を示した。
 こうした男女格差を受けて、北九州市役所は08年度に「女性活躍推進アクションプラン」を作り、性別に関係なく能力発揮できる職場を目指してきた。
 14年度には第2期計画をスタート。入庁後10年ほどは、男女とも2年程度の短いサイクルで異動させ、子育て期前に経験を積めるようにした。女性も係長昇任試験に挑戦しやすい制度に改革。男性の育児参加を促そうと、「ノー残業月間」などで時間外勤務を14・9%(07年度比)削減し、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を進めている。女性管理職の比率は5・3%(07年度)から13・8%(15年度)に伸びた。
 女性の輝く社会推進室は「市民の半数は女性であり、女性が政策決定に参加することで行政サービスの質も上がる。これはどの組織でも同じこと」と、地元企業にも女性活躍推進を働き掛けている。

●メモ=女性初

 1990年代に入ると、さまざまな分野で女性初のトップが誕生した。均等法が施行された86年から旧社会党委員長を務めた土井たか子氏は、93年に衆議院議長に。94年には最高裁判事に高橋久子氏、警察署長(警視庁三田署)に桜井るゑ子氏が就任。宇宙飛行士の向井千秋氏が米スペースシャトル「コロンビア」に搭乗した年でもあった。97年に官僚トップの事務次官(旧労働省)に松原亘子氏。2000年に大阪府知事となった太田房江氏は、大相撲優勝力士に贈る知事賞の贈呈をめぐり、女人禁制の土俵に上がれず賛否を呼んだ。ただ、近年でもトップとなる女性は一部で、女性管理職の割合は約11%にとどまっている。

西日本新聞社

最終更新:1月7日(木)17時30分

西日本新聞