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セブンイレブン、再建した店のそばに容赦なき新規出店

ニュースソクラ 2月3日(水)11時50分配信

集中出店の弊害(2) 過労死寸前のオーナー

 セブンーイレブン・ジャパンのドミナント(高密度集中出店)戦略の洗礼を受けた古参オーナー、多摩真一氏(仮名、60代)の半生をみてみよう。

  一本気でガッツがあり、一般のコンビニオーナーとはまったく違う異色の経営者だ。社会人のスタートが証券会社のセールスマンで、社長賞をもらうほどのスゴ腕だった。

 実家が製菓業だったので、若いころから独立心が強く、30代でミニストップ池袋北口店の成功報酬型の「雇われ店長」となり、コンビニの世界に入った。それ以来34年、コンビニに人生をかけた大ベテランだ。

  ミニストップ時代は、ヤクザのたまり場で一般客に敬遠されていた不振店を3年で建てなおした。ヤクザの出入りをシャットアウトし、一般向けにリニューアルし、ワースト10からベスト10の繁盛店に作りかえたのだ。最後はミニストップのパンフレットに載るほどのモデル店に変貌させた。最盛期は年収2000万円も稼いだ。

そこで蓄えた資金をもとに1988年、現在のセブンーイレブン店を約3000万円で買収した。この店も8年ほど日販40万円で低迷し続けたイワクつきの中古店だった。ミニストップで6年の経験があり、「コンビニの再建屋」としてウデ試しをしたかったのだ。

  この店は小田急線沿いだが、背後に山をかかえ踏切や陸橋で分断され、定住人口は1500人ほどで商圏としては最悪だった。苦戦が続くコンビニ店が多い現在でもコンビニ1店あたりの平均人口が2300人であることかららみても、いかに恵まれていないかが分かるだろう。

唯一のとりえは近くに専修大と明治大があり、世田谷通りのロードサイド店であることだ。このためクルマ客が見込めて学生客も引っ張れる。だが、駐車スペースがなく、いわば路上駐車で買い物をしなければならない。

そんなハンディを背負った店だったが、「こんな商圏でやれるのは俺しかいない」と、再建屋の血が騒いだという。当時、新築だと1億円かかるといわれており、安い価格も魅力だった。

そんな三等地商圏をどう切りひらいたのか。秘策は池袋でもやった宣伝チラシをポストに投げこむポスティング作戦だった。

  「店が立ち上がるまで、月2回、毎回1000件ぐらいチラシ配りをしましたよ。バイト2人を連れて家や団地を廻ったのです。コピー代で1、2万円、バイトの日当で1万円ほどかかったけど、客を引っ張るのはこれしかない、とね。ポスティングなどコンビニオーナーは誰もやりませんよ。この店は前のオーナーが選んで作ったので、セブンーイレブン・ジャパン(セブン本部)が市場調査したわけではなく、責任がないのです。だから必死でした」

  6、7年と地道なチラシ配りを続け、顧客名簿を集めた。その甲斐あって日販も60万、70万と伸び、最高80万までいった。うなぎセールスでは全国1位、新茶セールスでは全国6位(関東1位)、クリスマスケーキなど400個売り、イベントに強くなった。最後はオーナー仲間が、「ノウハウを教えてほしい」と言ってくるようになった。

 それが暗転したのが、開業10年目の近隣へのセブンーイレブンの新規出店だった。セブン本部は毎年の実績をじっくり観察しており、「これならもっといけるぞ」と判断したのだ。

 多摩真一氏は98年11月の新規出店を悔しそうに、こう語る。
「もう、挨拶もなにもなくいきなりですからねぇ。新規出店を知ったのは、(商品搬入の)運転手さんからですよ。『こんどセブンができるのですね』、『ナニッ!』っと。寝耳に水ですから、怒って本部にクレームをつけると、『ああ、作りますよ。いやだったらやめろッ』、『(売上が落ちるのは)オマエのやり方が悪いッ!』と、こうなるのですよ。話し合いもなにもない。発覚したのは全部できた後。ドミナント(高密度集中出店)すると、配送コストが安くなる、とかいうじゃないですか。そんなのキレイ事、ぜんぶ本部の都合ですから、既存店のオーナーにとっては、サギにしかみえません」

 私がセブンーイレブンOBに取材したところ、「新店で日販80万円いったら追加出店する」と、リクルーター(新店開発社員)とOFC(店舗指導員)で暗黙の合意ができていたという。当時はまだ、半径1キロ内には新規出店しないと決まりがあったのに。

 これが多摩夫妻を過労死寸前に追いこむ、連続4店のセブンーイレブン出店の始まりだった。

■渡辺 仁(経済ジャーナリスト)
中小企業を含め産業界の動向にくわしい。長年、コンビニ問題に取り組む。著書に「セブンイレブンの罠」。

最終更新:2月3日(水)11時50分

ニュースソクラ

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