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セブンイレブン、500m以内に4出店、先行出店台無しに

ニュースソクラ 2月4日(木)11時50分配信

集中出店の弊害(3) 「妻が癌でも容赦なく」

 セブンーイレブンでのドミナント(集中出店)の残酷さは、地域に一番乗りで出店してもすぐライバル店を出され、売上を奪われることだ。そこには先行者の権利も経営努力も一切守られていない。

 もちろん、契約に縛られ、OFC(週2回巡店する指導員)に監視され、経営の自由などもない。パイオニア店の苦労が水の泡となり、古いオーナー(地域ナンバーワン店)ほど報われず、使い捨てというよう扱いを受ける例が少なくない。

 私はこれまでの取材で、そんなオーナーたちの悲惨な声をイヤというほど聞いた。最悪、売上激減による経営苦に押し潰されたオーナーや妻が過労死したり、自殺したり、自己破産したケースをみてきている。

 なぜ、オーナーたちの命を奪うほどの出店をセブンーイレブンは繰り返しているのか。理由は単純だ。ドミナントがチェーン本部の利益を上げるのに有効な戦略だからだ。これこそが売上を伸ばし、利益を最大化させる、最も手っ取り早く確実な方法だからである。 

 これがイトーヨーカ堂のような直営店だと、莫大な資金がかかり、出店リスクが高い。また、いったん業績不振になっても簡単に閉鎖できないし、リストラも大変だ。社会的影響も大きい。現実問題、今、イトーヨーカ堂は40店もの大閉店・大リストラに踏み切ろうとして苦労している。

 (加盟店主が全責任を負う)フランチャイズ方式だと、セブン本部にリスクがほとんどないのだ。出店を規制するフランチャイズ法もない。店を増やせば増やすだけ、売り上げが上がり、利益もとれる。

 そのうえ苛酷な年中無休の24時間営業を押しつけられ、事実上の労働法逃れ(大半の加盟店のオーナーが従業員であったら労働基準法違反となる労働条件で働いている)ができる。“一石二鳥・三鳥”のおいしいビジネスだ。

 そもそも労働組合(セブンイレブン・ジャパンには鈴木会長の大反対で労組がない)があったら今のような、オーナーや従業員には非人間的にみえる24時間営業は簡単ではなかっただろう。

 前2回の連載で紹介してきた多摩真一氏(仮名)のケースがその典型例だ。

 28年前、彼がセブンーイレブンを開業した時は、近隣にはファミリーマート1店だけだった。もちろん、当時は今と比較にならないほど景気がよく、いわばコンビニブームの走りだった。

 立地条件は三等地だったが、多摩氏の店が繁盛していれば、ライバルチェーンが狙ったのも当然だろう。

だが、それ以上にこの15年ほどの間に2キロ四方でセブンだけで8店、ローソン、ファミマを入れると15、6店もひしめく過密市場となったのだ。人口1万数千人の商圏なので1店あたり1000人ほどと全国平均(2300人)の半分以下だ。

 セブンーイレブンだけで、98年の新規出店を皮切りに翌99年、08年(専修大学内)と、500メール四方に出店され、完全にセブン店で包囲されてしまった。

 多摩真一氏が怒りをぶちまける。

 「ふつうに考えて、1店あったところにもう1店出すと、売上が半分になりますよ、日販60万円が30万円に。それが3店、4店増えるのですよッ! こんなことあり得ないですよ!  いいですか、ローソンやファミマなら、まぁ、競合だからしょうがない(と諦めもつく)。売上も全国平均(日販65万円)以上ならしょうがない、と思うじゃないですか、下がっても10万円ぐらいだろうと。そうじゃないのですよ、私の店はッ! (ピークは日販80万円台だったのに)全国以下の40万円、50万円まで落ちてしまったのですよッ! そんな店の近くにバカスカ作るバカいますか? 仮に(売上が)30万円に落ちても、まぁ、1カ月我慢してくれッ、というなら我慢しますよ。それが(1回ドミナントされると)毎日毎日、何年も(相手が潰れるまで)続くのですよッ!その消えたお金(減収分)はどこにいったかというと、(ライバル店の売り上げとなって、結局)全部、本部にいってるんですよッ!!」

 だが、それ以上にぜったい許せないことが起こった。

多摩夫妻には子どもがいない。コンビニ経営が二人の人生であり、生き甲斐だった。その妻にガンが発見されたのだ。2011年6月のことだ。

 コンビニ経営で妻の存在はクルマの両輪である。24時間店は妻がいなくては廻っていかない。それを見込んでフランチャイズ募集では夫婦ペアが最低条件である。

 そのかけがえのない妻が生きるか死ぬかのガン手術だというのに、セブン本部からは見舞いの挨拶もねぎらいの一言もなかった。

 それどころか、入退院でバタバタしている真っ最中、最後の新規出店を仕掛け、二人を絶望のドン底に突き落とした。血も涙もないとはこういう仕打ちをいうのではないだろうか。

■渡辺 仁(経済ジャーナリスト)
中小企業を含め産業界の動向にくわしい。長年、コンビニ問題に取り組む。著書に「セブンイレブンの罠」。

最終更新:2月4日(木)11時50分

ニュースソクラ