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【連載】会社員が自転車で南極点へ9 南極旅行で気になるトイレの処理とは

THE PAGE 5/8(日) 11:15配信

慣れようにも、慣れないこと

会社員が自転車で南極点へ9 大島義史 THEPAGE大阪

 午前6時、ガイドのエリックと僕は、徐に起きあがり、いつものように朝食の水をつくった。ラーメンを頬張り、テントを撤収し、ソリに荷物を括り付け、出発の準備をする。今日で3日目。そろそろこの作業にも慣れてきた。が、ひとつだけ、慣れようにも、慣れないことがある。それは「トイレ」だ。南極でトイレはどうするのか? それは僕にとって最大の関心事のひとつだった。

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テントの中で恥ずかしい思い

 普段、僕は一人で自転車旅行をしている。だから、トイレで悩んだことはない。小さい方をしたくなれば、テントの外に出て、そこらへんでする。大きい方をしたくなれば、やっぱり同じように外でする。屋外で用を足さなければならないのは、人気のない砂漠や荒野、雪原がほとんど。誰かに見られる心配もないし、邪魔されることだって、ない。完璧にストレスフリー。むしろ、背徳感による興奮作用すら感じる。


 しかし、今回はどうだ?エリックは、執拗にテントを1つにして、二人で使用することを迫った。僕は嫌だった。だって、トイレどうするんだ?って、思うじゃないか。結論から書いておきたい。小は中でした。大は、外でした。

 中で小をするのは、はっきり言って恥ずかしかった。エリックがすぐ傍で、じょぼじょぼと音を立てて排泄する。閉め切られたテントの中では音が響く。臭いもする。目をそむけていても、その生々しい光景が脳裡に浮かぶ。小は、尿瓶にして、あとからまとめて捨てる。南極は、ゴミ持ち帰りが原則だが、何故か小だけは捨てることが許可されていた。

 当初、僕は恥ずかしさから外に出てやっていた。しかし寒さに耐えられなくなると、頬を真っ赤に染めながら、中でした。多い時には一晩で2Lも出た。寒いとトイレが近くなるのだ。

トイレのたびに重くなる荷物

 一方で、気になるのは大。これは油断できない。外でするとき、テントの風下にポジションをとらないと、南極の風に直撃されて、冷える。冷える場所は、あの一番デリケートな部分だ。凍りつくレベルで冷える。現に、大は“産まれた”瞬間から凍りついている。生身の身体も然り。

 そして、その大は全て持ち帰る。水分がたっぷりだから、妙に重い。食料は全て乾燥食品である。その乾燥食品に水を加えて食事をつくり、その食事から大がつくられる。つまり、僕達の荷物は徐々に重くなっている?・・・そんなことすら考えてしまう。

 3日目は、89度17分まで走行。10時間、走ったり、押したり。24キロ程、進んだ。やっぱり、時速2キロ。それでも、昨日よりは、だいぶ速くなったと感じる。

 4日目は、89度30分まで走行。同じように10時間。路面が固くなってきたためか、自転車に乗る機会が増えた。29キロ。ちょうど、ここで南極点まで半分の距離だ。

 南極は、真夜中になっても、昼のように明るい。「急いではいけないよ。」「ここは日が沈まないんだからね。」エリックは言った。そうだ、焦ってはいけない。ここは南極大陸。自分達で決めない限りは、時間は止まったままなのだ。

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最終更新:9/2(金) 14:35

THE PAGE

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。