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社説[北朝鮮の党大会]核開発で未来は描けぬ

沖縄タイムス 5月9日(月)5時0分配信

 36年ぶりに開催されている北朝鮮の朝鮮労働党大会で、金正恩(キムジョンウン)第1書記は「(北朝鮮は)責任ある核保有国だ」と宣言した。権力継承した2012年の改正憲法でも「核保有国」と明記しているが、核放棄しないことをあらためて示したものだ。「自衛的な核武力を質量ともに一層強化していく」と、核開発の継続も正当化した。
 「敵対勢力が核で自主権を侵害しない限り、先に核兵器は使用しない」「世界の非核化を実現するために努力する」とも述べた。「核保有国」を誇示しながら「非核化」に言及する。矛盾しており、国際社会では通用しない。
 核を切り札に米国と対等の立場で、直接交渉することを目指しているとみられるが、本気で関係改善する意思があるなら、核・ミサイル開発を直ちにやめるのが筋だ。
 金第1書記が軍、党、政府のすべての最高ポストに就いてから4年。大会は権力基盤が確立したことを国内外に鮮明にする狙いがあるとみられるが、核・ミサイル開発に固執していては、国際社会から孤立するばかりである。
 今年1月に4回目の核実験となる「水爆実験」を突然行い、2月には事実上の長距離弾道ミサイルを発射している。明確な国連決議違反であり、北朝鮮は現在、国際社会から厳しい制裁措置を科されている。後ろ盾の中国との関係も冷え込んでいる。金第1書記は核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」を取っているが、核・ミサイル開発と経済建設は相いれないことを知らなければならない。
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 北朝鮮の核開発を巡っては、1994年の米朝枠組み合意で凍結するとし、中国を議長国とする2005年の6カ国協議の共同声明で放棄するとしながら、裏切られてきた。その連続である。
 国民の生活は困窮している。国連食糧農業機関(FAO)は4月、北朝鮮で15年秋~16年春の穀物収穫量が減少し「大半の家庭が十分な食糧を得られていない可能性」を指摘した。首都・平壌と地方の経済格差も激しい。
 南北の1人当たり国民総所得(GNI)の差は21倍に上る。金第1書記も党大会で経済の不振を認めた。
 北朝鮮北東部豊渓里(プンゲリ)にある核実験場で5回目の核実験を行う準備をしている可能性がある。核実験に踏み切れば、さらなる制裁強化が待っているだけである。
 核・ミサイル開発に膨大な予算をつぎ込むのをやめ、国際社会の協力を得て国民の生活を第一に考えるのが最高指導者の姿ではないのか。
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 1980年の前回大会は祖父の故金日成(キムイルソン)主席時代である。金主席死後の90年代後半は「苦難の行軍」と呼ばれる食料危機で多数の餓死者が出た。このため父の故金正日(キムジョンイル)総書記時代は一度も大会を開くことができなかった。
 前回は118カ国の代表団が出席したが、今回は外国政府高官らの出席はない。国際的な孤立を象徴している。外国の報道陣約120人を受け入れながら取材を認めない。北朝鮮が国際社会に向き合う姿をよく示している。

最終更新:5月10日(火)18時30分

沖縄タイムス