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本当に伝えたいのは、無私・無欲の庶民のヒーロー  歴史学者・磯田道史氏

THE PAGE 5月12日(木)17時0分配信

 映画『殿、利息でござる!』(5月14日松竹系で全国公開)は“庶民の忠臣蔵”だと原作者の歴史学者・磯田道史氏はいう。磯田氏原作の時代劇は個性的だ。

 2010年公開の映画『武士の家計簿』では発見された家計簿をもとに、加賀100万石の武士の実生活を精密に復元した。今作の主人公はうってかわって東北は仙台藩の庶民・穀田屋十三郎たち。いま、どうして、この人々を取り上げたのか、磯田氏にきいてみた。

織田信長や徳川家康より穀田屋十三郎のことを伝えたい!

 磯田作品の登場人物は、どれも個性的である。作品にとりあげる人物を選ぶのに、なにか基準はあるのだろうか。磯田氏から明快な答えが返ってきた。

 「まず日本中をくまなく歩いて、ものすごい量の人物や古文書を調べる。そうすれば埋もれている素晴らしい人物に出会える可能性が上がる。僕が重視しているのは、有名な人かどうかではない。無名でも『こんな人がいた』と家族や友人に伝えたくなるような人物をみつけ、その人の伝記を書く。ただそれだけです」。

 今回の映画の主人公・穀田屋十三郎は、まさに、家族や友人に伝えたくなるような人物だ。

 「僕は自分に子どもが生まれたとき思いました。自分の子どもに、果たして、織田信長や豊臣秀吉の伝記を読ませたいだろうか、と。歴史上に大足跡を残したのは間違いない。しかし、見方を変えれば、人を大勢殺したにすぎないかもしれない。そこへいくと、仙台藩領の無名の庶民・穀田屋十三郎たちは、すごい。苦労をいとわず、仲間をあつめ、お金をためて、後世まで地域の人たちが幸せに生きられる仕組みをつくった。人を殺さない“庶民の忠臣蔵”みたいな、いい話です。これを伝えないわけにはいかない、と思いました」

 江戸時代中期、陸奥国仙台藩領・吉岡宿の住民が貧困にあえいでいるのを見兼ね、穀田屋十三郎らの有志は、私利私欲をすべて排除し、必死に1000両を集め、その金を仙台藩に貸し、利息で宿場を盛り返そうとした話だ。

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最終更新:5月12日(木)17時0分

THE PAGE