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世界最大級ドローンメーカーDJI社の企業価値が1兆円を超えた理由(前編)

ZUU online 5月9日(月)11時10分配信

Amazonがドローンを使った配送サービス「Amazon Prime Air」の映像を発表したのが2013年12月。当時そのビデオは、企業ブランディングのためのコンセプトムービーではないかと勘違いされたほど衝撃だった。

もはやドローンが荷物を配送するのは妄想でも絵空事でもない。Amazonは昨年7月に「ドローンスーパーハイウェイ構想」を提案、さらに11月には新型の大型ドローンを公開した。

日本国内でも動きがある。12月には通称ドローン法(改正航空法)が制定され、ほぼ同時期に千葉市がドローン特区に指定された。もしかすると世界初のドローン宅配が千葉市で開始されるかもしれないという状況だ。

2回に分けて、ドローン市場の動向と見通しについてレポートしたい。

■(1)ドローン市場は今、商用化の潮目に来ている

ドローンとは無人航空機全般のことだ。他にもUAV(Unmanned Aerial Vehicle)という略称で呼ばれたり、回転翼の数からマルチコプターとかクアッドコプターと呼ばれたりするが、ドローンという呼び方が一番よく知られた呼び名だろう。ちなみに、ドローン(Drone)は、オスのミツバチという意味で、起動音が蜂の飛んでいる時の羽音に似ていることに由来するそうだ。

一体いつ頃からドローンは話題になってきたのだろう。1990年代後半、自分が学生時代に宇宙科学研究所の研究員として、夜な夜な実験をしていた時、すでに無人航空機の研究発表が盛んに行われていたのをかすかに記憶している。当時は、無人航空機=軍事用途という印象で、今ほど商用での可能性は見出されていなかった様に思う。

それ以降、ドローンについて気にも留めていなかったが、『フリー』や『ロングテール』といった本の著者で、米国IT誌『ワイアード』の名物編集長だったクリス・アンダーソン氏が、編集長を辞任し自ら起業したドローンの製造会社3Dロボティクスに専念する発表を見て、自分の場合はドローンビジネスという存在を初めて知った。それは確か2012年ごろだった。

一般にドローンと聞くと何を思い浮かべるだろうか。ドローンという言葉が一躍広く知れ渡ったのは残念ながら良いニュースではなかった。2015年4月22日に元自衛官が、DJI社のドローン(Phantom)を使って、危険物を落下させた首相官邸無人落下事件だ。あの事件によってドローンは、ビジネスチャンスというよりも社会的な脅威やリスクとして扱われた。

この事件にも驚いたが、もっと驚いたのは、その事件で使われたドローンを製造販売しているDJI社が、その翌日4月23日にGPS設定により首相官邸と皇居近辺をドローンが飛行できない様に設定することを発表したことだった。ドローンのイメージダウンを避けるためであるが、機敏な対応はネット上で盛り上がった。

この事件をきっかけにドローンは、多くの人に知られる様になり、ドローンがここまでできるのかと驚くきっかけにもなった。ただ、ドローンの話を周囲にすると人によっては「何か怪しい」と言われることもあり、まだドローンにはそう言ったマイナスイメージ感も残っているかもしれない。

言わずもがなドローン自体は怪しいものでも何でもなく、使い方次第ではとんでもない可能性が秘めたビジネスシステムだ。ただ、ドローンがパソコンやスマホと違って、「空」を自律的に動くことができるため、前述の事件が起きない様、ドローンの進化と合わせて様々なルールや規制が必要というだけだ。今、まさにそのルール作りが急速に議論され、ドローンの利用を促進するという方向でコンセンサスが得られようとしている。

■(2) Amazonが発表した「ドローンスーパーハイウェイ構想」とは

昨年7月末、アマゾンが「ドローンスーパーハイウェイ構想」を提案した。

この構想は上空200フィート(約61m)から400フィート(約122m)を高速移動ドローン用のゾーンに、そして200フィート以下は低速用のゾーンとして、ドローンでの配送を安全にできる様にするための提案だった。そして空にドローン専用の物流道路を作る構想でありそれはまさに空のモータリゼーション構想に他ならない。

さらに11月にはAmazon版ドローン「プライム・エアー」の最新版も公開された。

2013年に発表された「プライム・エアー」と比べると、新型は大型化していて、時速は最大88キロメートル、配送ステーションから24キロメートル以内なら30分以内で配達が可能となる、とのことだ。コンセプトムービーを見ると、様々なルールが整備できたらすぐにでも実現してしまいそうなレベルだ。

日本国内でもドローン活用に関するルール作りは進んでいるのだろうか。先述の事件も後押しとなり、ついに昨年12月、ドローン法(改正航空法)が制定されたのだ。主な規制内容は以下の通りだ。

規制内容によれば東京近郊でのドローン飛行は、ほぼ全滅という状況で都心に住んでいる人はドローンを飛ばすために遠出をしなければいけない。人の上にドローンが
墜落して怪我をさせてしまうリスクを考えれば、厳しい規制はあった方がいいだろう。

●ドローン法(改正航空法)の主な規制内容

(1) 人がいる集まる場所や人口集中地区は自分の敷地内でもNG(東京はほぼ無理)。
(2) 日中しかも目視できる範囲で飛ばすこと。
(3) 危険物輸送禁止、物の落下もNG。
(4) 国交省による許可承認があればOK。
(5) 室内、200g未満のドローンは規制適用外。

規制と同時に規制緩和区域も発表され、千葉市がドローン特区に指定された。千葉市ではドローンを使った宅配サービスなどの実証実験に取り組む計画があるとのことで、もし実現すれば世界で初めてドローン宅配が千葉市で始まることになる。日本でも規制と緩和の両輪が一気に回り始めようとしている。

ではドローンの商用利用はどうだろうか。例えば2015年9月、経産省がドローンを使った実証実験を発表した。そのプランによれば、静岡県熱海市の沿岸からドローンを飛ばし、約10キロ先の初島まで荷物を運ぶ計画だという。

新型「プライム・エアー」の飛行性能と比較するとこの実験内容は少々物足りないが、それでもドローン市場を作り出すために官民連携した土台固め動き始めていることには変わりはない。 

最後に“Made in Japan”のドローンは製造販売されるのだろうか。現時点では民生用ドローンの製造販売では日本メーカーの存在感はない。中国のDJI社が頭一つも二つも抜きんでていて、今のところ仏パロット社、北米3Dロボティクス社の3大メーカーが民生用ドローン市場を圧倒しているからだ。

ただし産業用についてはまだまだチャンスがある。2016年4月20~22日の3日間、幕張メッセで「第2回国際ドローン展」が開催されたが、展示内容は民生用ではなく産業用に特化。日本企業が新型ドローンを数多く発表していた。日本企業がこれほど多くのドローンを発表したのは初めてではないかと言われている。

またソニーの子会社、ソニーモバイルコミュニケーションズなどが設立した「エアロセンス」がドローンへの参入を表明した。ドローンマニュファクチャラーの構図が細分化されていけば、まだまだ事業展開の可能性はあるだろう。

しかし、高城剛氏の著書『空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか?』(集英社)によれば、3大メーカーの経営トップと面談している同氏は、やや悲観的だ。

その理由はDJI社の企業規模と開発パワー。DJI社は2015年には従業員は3000人に達し、その半数にあたる1500人が開発担当者だという。今、日本メーカーがドローンの製造販売(マニュファクチャラー)として、1500人が開発担当者の揃えることは至難の技だ。

「ドローンマニュファクチャラーの技術レベルの向上し投資と実用性のバランスが取れてきたこと」、「規制やルールの整備が具体化してきたこと」「社会的関心が高まってきたこと」から海外に追いつき、日本も今ドローンは商用利用の道が急速に開けつつある。

次回後編は、世界のドローンビジネス市場の動向についてレポートしたい。


高橋広嗣(たかはし・ひろつぐ)
フィンチジャパン代表取締役。早稲田大学大学院修了後、野村総合研究所経営コンサルティング部入社。経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルタントとして活躍。2006年「もうひとつの、商品開発チーム」というスローガンを掲げて、国内では数少ない事業・商品開発に特化したコンサルティング会社『フィンチジャパン』を設立。著書に『半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法』がある。昨年には新たにコンテンツマーケティング事業を立ち上げ、耳×ヘルスケアに特化した自社メディア「耳福庵」の運営も行っている。

最終更新:5月9日(月)11時10分

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