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部下が動かないのは「◯◯への期待感」を示せていないから!

ZUU online 5月10日(火)17時56分配信

リーダーが持つ悩みの多くは、「部下の乗せ方がわからない」というものである。要は、自分と部下の間にある熱意の差だ。

部下が上司の話に乗ってこない理由は簡単で、「ビジョンを示せていない」からである。ビジョンを示していないのだから、部下が「やりたい」と思わないのはある意味当然である。

リーダーの仕事で一番大切なのは、明るい未来を示すことであり、これに馳せ参じたいと思った人に対してだけリーダーシップを発揮できるからだ。

■会社に社是社訓がある理由

では、いったい部下を乗せるためのビジョンとは何だろうか。一番手っ取り早くイメージできるのは、会社にある社是社訓である。

もしかすると、「社是社訓」と聞いて「え?あれがビジョン?」と思われた人もいるかもしれない。毎朝、社是社訓を唱和している人も多いだろうが、あれを何のためにしているのか、わかっていない人もいるのではないだろうか。

社是社訓がある理由はただひとつ。社員教育のためである。

社是社訓をつくるのは、大部分が創業者である。創業者とは、何もないところから会社を興した人のこと。一般にほとんどの会社は創業してから5年以内に消えていくという状況の中で、創業者の苦労は並大抵ではない。生き残れる会社はわずかしかなく、それができた理由が社是社訓の中に込められているのである。

社是社訓には、世間の荒波を乗り越え、会社を存続させていくための、創業者からのメッセージが詰まっているのだ。ところが、それが形骸化して意味のないものになってしまう。

■社是社訓が示していること

読者の皆様によりリアルにご理解いただくために、自分のことで恐縮だが、筆者が経営している1社の社訓を例に挙げてみよう。全部で十訓あるが、その中の2番目と3番目はこのような文面にしている。

2.自分の強みを磨く努力を惜しまず、人のために使うこと
3.他人の弱みを見つけたら、さりげなく助けてあげること

これは「ここで働く者は、自分の得意分野を他人のために使えばいいこと」「代わりに自分の弱点は仲間が補ってくれること」を明確に打ち出したものである。この会社では、自分の欠点を直す必要などない。自分のできることで役立てばいいという、従業員の目指す方向性を示したのである。

ここで「自分にはビジョンなんてつくれない」と思う必要はない。部下を持っている人は、まずは自分が会社のビジョンや目指す未来像をよりよく理解し、それを下の者に伝えればいい。「こんなキレイごとが通用するのか?」と心配する必要もない。人はみな、正しいことをしたいものだからである。

■会社の理念を浸透させるには

社是社訓を下の者にも浸透させるためによく使われる方法が、毎朝の唱和である。もちろん筆者の会社でもやっているが、それだけでは十分ではない。唱和しているだけでは、下の者は何のためにそれをしているのか、それがどういう意味なのかがまったくわからない。ことあるごとにいい含める必要がある。

その一環として筆者が行っているのは、採用面接を利用することである。人員採用とは会社の根幹に関わる業務であり、筆者は今でも時間の許す限り、面接するようにしている。その際、必ず現場の責任者も参列させている。

外部に向けて発信する情報とは、内部を啓蒙する最大のチャンスである。これから入社する者の直属の上司に対しても、経営層が入社候補生に何を語っているのかを聞かせ、意思統一を図る絶好の機会にしているのである(それを証拠に同席している現場の長が一番熱心にメモをとっている)。

経営者は、幹部が自分の想いをわかっているはずだと思い込みがちだが、日常業務に忙しい者は、日々の仕事に忙殺されているうちに、どうしてもそうした理念を忘れがちになる。

これをお読みの方で部下をお持ちの人は、「機会をとらえて理念を浸透させる」ことを、ぜひ習慣化してみてほしい。先の例のように、今どうせやっていることに結びつけることをお勧めしたい。飲みニケーションだけが、意思統一の方法ではないのである。

■部下を動かすには「未来への期待感」が必要

このように、あらゆる機会をとらえて会社の価値観、上の人が持つビジョンを積極的に下に示してゆくのは、大切なことである。下の者は、行く道がわからないと、どちらに向かえばいいのか迷うからだ。

部下を乗せるためにはモチベーションが必要となるが、その正体は何かというと、「未来への期待感」である。もしあなたがリーダーであるならば、下の者に目指す未来を見せて「そこへいきたい、ここで頑張ればいけるに違いない」と感じさせることである。

その際のコツとは、部下が関わりたくなるような、ワクワク:ドキドキ=50:50の黄金比率に則った目標を設定すること。つまり、期待感半分、緊張感半分の「届きそうで届かない」「簡単過ぎず難し過ぎない」目標にすることである。そのためにはきちんとメンバーひとりひとりを見て、彼らが乗ってくるような課題を一緒に考えていかなければならない。

マネジメントの父と呼ばれるP・F・ドラッカー氏は、著書『マネジメント』の中で「具体的な目標を持たない領域は、必ずないがしろにされる」と述べている。

つまり組織とは、目指すべき理想の姿を明確に提示し、さらにそれを実現するための数字等を具体的に掲げることによって、初めてそこに向かって走り始めるのである。

理想だけでは伝わらず、意味もわからず数字目標だけを部下に押しつけても行動できない。理念という動機づけと、それを達成するための方法を示すことが、部下を動かす力となるのである。

俣野成敏(またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

最終更新:5月10日(火)17時56分

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