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東日本大震災の教訓を熊本・大分へつなぐ~義援金差押禁止の立法提言

東北復興新聞 5月10日(火)0時18分配信

日弁連による緊急会長声明

2016年5月9日、日本弁護士連合会(日弁連)が『平成28年熊本地震に関し義援金差押禁止措置等を求める緊急会長声明』を出しました。http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2016/160509.html
緊急声明の内容は、(1)義援金を差押禁止にする特別措置法を制定すること、(2)特定非常災害特別措置法の適用項目拡大、の2本立てです。東日本大震災の実績や、熊本県弁護士会による1200件以上の電話無料法律相談の内容などから、説得的に論じられていると考えます。ここでは、東日本大震災の教訓を紹介しながら、それぞれの対応の必要性について検討を加えます。

義援金の差押禁止法案

東日本大震災のときも、弁護士は被災地で無料法律相談を繰り返してきました。相談をしていくうちに、「義援金」のほか、「被災者生活再建支援金」(被災者生活再建支援法)や、「災害弔慰金」(災害弔慰金法)など、被災者が手にする公的支援金が、差押禁止財産になっていなかったことに気が付きました。すなわち、願いが込められた義援金や、再建や弔意を目的とした公的給付が、差し押さえられたりして、手元に残せない可能性があったのです。

そこで、弁護士らは、被災者が受け取る支援金等の差押禁止立法の必要性を提言し、超党派の議員立法を実現しました。「被災者生活再建支援金」「災害弔慰金」「義援金」が差押禁止になりました。ところが、将来にわたって恒久的な法律として形になったのは、「被災者生活再建支援金」と「災害弔慰金」だけです。この2つの法律は、もともとベースの法律があったためです。しかし、「義援金」は、ベースとなる法律がなく、東日本大震災限りの「特別措置法」だったため、熊本地震では適用されません。

緊急提言の実現が被災ローン減免制度の利活用にも大きな影響

熊本地震の住宅被害は、全壊「2,618棟」、半壊「3,970棟」、一部損壊「26,204棟」と甚大です(内閣府(防災担当)による5月9日時点の報告http://www.bousai.go.jp/updates/h280414jishin/pdf/h280414jishin_21.pdf)。住居や事業所が被災し、個人で住宅ローンや事業ローンの支払いに窮する被災者が増えることが予想されます。そこで活用すべきなのが「被災ローン減免制度」です。正確には「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」といいますが、被災地では「被災ローン減免制度」と呼んで周知を図っています(適用には条件がありますので、詳しくは弁護士の無料法律相談窓口などにご相談をお願いします)。

法的な破産手続きでは、手元に残せる現預金はかなり限定的ですが、「被災ローン減免制度」を活用できた場合には、かなり多くの生活再建資金を残せます。たとえば、被災者生活再建支援や災害弔慰金などの「差押禁止財産」や、「現預金500万円まで」ほか一定の財産を、返済することなく手元に残せるのです。そのうえで支払えない部分のローンを一定の条件のもと減免できます。もし「義援金」が「差押禁止財産」でなければ、保険金が入った場合や、元々所持していた現預金などの総額によっては、手元に確実に残るとは限りません。

また、被災ローン減免制度では、裁判所の特定調停という民事調停の手続きを介することで最終的に金融機関と債務者がローン減免の合意をする流れとなっています。この特定調停の申立費用は、債務者負担(被災者負担)です。被災者の手続利用の負担を少しでも減らすためには、日弁連の緊急声明のもう一つの柱である、「特定非常災害特別措置法」の項目追加により、申立費用を無償化することが求められるのではないでしょうか。

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最終更新:5月10日(火)9時18分

東北復興新聞