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トヨタ「円高ショック」5期ぶり営業減益 1兆円の積極投資は継続

ZUU online 5月11日(水)18時20分配信

トヨタ自動車 <7203> が5月11日の決算発表で、2017年3月期における予想営業利益が40.4%の減益となる見通しを発表した。同社の減益予想は5期ぶりとなる。なお、2016年3月期の連結決算は、営業利益ベースで過去最高益を更新したものの、年初からの円高で増益幅は小幅にとどまった。

■トヨタ16年3月期実績は史上最高益更新

16年3月期実績を確認しよう。売上高は28兆4031億円(前年比4.3%増)、営業利益は2兆8539億円(同3.8%増)、最終利益は2兆3126億円(同6.4%増)の増収増益となり過去最高益を更新した。会社予想の営業利益2兆8000億円を上回り、アナリストのコンセンサス予想の2兆8700億円を若干ながら下回ったもののほぼ想定どおりの着地となった。

国内、海外を合わせた連結ベース(ダイハツ工業、日野自動車を含む)の販売台数は868万1000台と前年度に比べて3.2%減となった。うち、日本での販売は205万9000台と4.4%の減少、海外販売は662万2000台と2.9%の減少だった。

前期の実績為替レートがドル円で120円と15年3月期の110円から10円の円安が進んだことから、為替変動の影響が営業利益を押し上げた。

■トヨタ17年3月期は40.4%営業減益予想

今期の会社予想の前提となる想定為替レートは、ドル円で105円。前期の実績は120円であったため、15円の円高となる。

トヨタはドル建ての取引が大半で、対ドルで1円の円高により年間営業利益が400億円程度減少する収益構造だと言われている。15円の円高は為替では6000億円程度の減益要因となる可能性が高い。

販売台数は、日本、海外を合わせた連結ベースで890万台の2.5%増。うち、日本では224万台と8.8%増、海外では666万台の06%増を見込んでいる。

■北米の売上は4月も堅調

トヨタの北米販売台数は、2016年3月期で287万台(前年比5.7%増)を見込んでいた。実績では283.9台(同4.6%増)と若干予想を下回った。2017年3月期の北米自動車販売は285万台(前年比0.4%増)を見込んでいる。

米国のオートデータ社が5月3日に発表した4月の米国新車販売台数(速報値)では、トヨタは21.1万台を販売し、前年比3.8%増と米国全体の販売台数の伸びである3.6%増を上回った。米国大手メーカーの4月販売は、GMが前年同月比3.5%減、フォードは3.6%増、FCA は5.6%増。ライバルと比較しても健闘している。

■自動運転などの次世代への投資本格化

しかし、注目すべきは次世代へ向けた研究開発への積極的な姿勢だろう。2017年3月期の設備投資は1兆3500億円(2016年3月期比4.4%増)でそのうち半分弱が日本向け、研究開発費は1兆800億円(同2.3%増)と発表している。

研究開発費で1兆円を超える企業は日本ではトヨタだけだ。これは、世界でもトップクラスの水準だ。 世界をリードしているハイブリッド車(HV)を筆頭に、燃料電池自動車(FCV)、自動運転、AIなどの分野に積極的に研究開発費を投資している。

次世代の自動運転車では、現在の自動車メーカーだけでなく、グーグルやアップルと言ったITジャイアントが参戦、政治を巻き込んで世界的な開発競争が始まっている。 トヨタは、これまで自動運転をドライバーの補完的なものと位置づけてきていたのだが、今年の1月の東京ビッグサイトの「オートモーティブワールド」でドライバーを必要としない完全自動運転への方向転換する発言をしている。

グーグルは自社で自動車を作るつもりはなく、トヨタにも提携を求めていたようだが、トヨタは自社でイニシアティブを取ることを選択した。グーグルは5月に欧米自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と自動運転での提携を発表し、次世代開発競争は大きく動き始めているといえる。

また、積極投資の一環としてトヨタは米国にトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)を開設することを今年1月発表した。AIの研究拠点とするために、スタンフォードやマサチューセッツ工科大学といったAI分野で先進的な研究を行う有名大学の近くに設立する。TRIの初代CEOには、国防総省でロボティクスの研究をしていたプラット博士を起用、グーグルで自動運転プログラムの中心人物であったカフナー氏をクラウドコンピューティングの統括責任者として起用するなど、AIのドリームチームを結成した。5年で10億ドル(約1100億円)という投資額も話題になっている。

トヨタ自動車の決算は、日本企業の先行きを占う上でも非常に重要だ。来期見通しの大幅減益は、日経平均株価の予想PER(株価収益率)の前提となる日本の予想EPS(一株あたり利益)を押し下げる要因となる。

為替レートでの懸念はあるものの、リーマンショック時のように、自動車の世界販売が大きく冷え込むような状態ではないことが救いだろう。 ドル円はGW中の一時105円台から急反発している。逆に想定レートより円安が進めばトヨタの今期業績も上方修正される可能性が高まるだろう。

平田和生
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

最終更新:5月11日(水)18時20分

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