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ヤギ大もて 除草、命の教育、搾乳… レンタル急増 長野の直売所

日本農業新聞 5月11日(水)12時30分配信

 レンタカーならぬレンタルヤギの人気が高まっている。ヤギなら、危険な傾斜地の除草もお手のもの。人件費は掛からないし、乳が搾れて、癒やしにもなる。長野県伊那市ますみケ丘の農産物直売所「産直市場グリーンファーム」でもレンタルヤギの需要が急増、今年の予約を打ち切った。高齢農家や小学校など多くの現場で引っ張りだこで、いまや農山村の“アイドル”となっている。

 グリーンファームは、直売店舗に加えてヤギやポニー、ダチョウ、アヒルなどの動物を飼う施設がある。「家畜という農村文化を伝えたい」という同ファーム会長の小林史麿さん(75)の思いから、動物と触れ合う場として運営している。

 ヤギの貸し出しを始めたのは2011年。13年ごろまでは年間延べ15、16頭だったが、マスコミで取り上げられたことから15年は延べ76頭と5倍に急増した。今年は2月から受け付けを始めたところ、既に需要は70頭を超え、予約受け付けを締め切ったほどだ。

 申し込む人の8割は60~70代の高齢農家で、「あぜの草刈りにヤギを活用したい。昔、飼っていたので親しみを感じる」と年々、引き合いが強まっているという。

 そうした背景について同ファーム飼育部長の岩本寿枝さん(37)は「あぜ道の除草に加え、児童の情操教育など、利用者が必要な期間だけ低額でヤギを借りることができるからではないか」とみる。

 仕組みはこうだ。ヤギの貸出期間は1日から最長6カ月間で、料金は雄、雌、子ヤギいずれも同額。一般家庭が1回(3カ月まで)1頭3000円、延長1カ月ごとに1000円を加算する。企業、法人、自治体は1回1万5000円、延長は同5000円。運搬費は利用者が負担する。農家などが飼養するヤギを約2カ月間預かり、種付けするサービス(3000円)もある。

 ヤギは3棟の大型パイプハウスで約100頭を飼う。2月から出産ラッシュを迎え、見学者は敷地内を走り回る子ヤギと自由に触れ合うことができる。性格はおとなしく餌は雑草や野菜くず、果実、パン、米ぬかなどで、比較的飼いやすいという。昨年は伊那市や近隣市町村の小学校で、種付け後のヤギを児童が出産させ、命の教育にもつながっている。

飼育管理丁寧に 愛護精神忘れず

 ヤギの飼育者や研究者らでつくる全国山羊ネットワーク代表の今井明夫さん(72)は「除草などにヤギが活躍するのは、全国的なブームとなっている」とみる。

 ただ、こうした取り組みが定着するには課題もある。草刈りや触れ合いなどでヤギを貸し出す場合、「飼育管理者が動物愛護の気持ちを持ってヤギの健康管理に気を付けなくてはならない」と今井さんは指摘する。飲み水が不十分だったり、野犬にかみつかれたり、ポリ袋などを食べて死亡したりと数多くの事故を目の当たりにしているからだ。「ヤギは人間の道具ではない。命あるものを虐待することなく適正に取り扱うという動物愛護管理法を守ってほしい」と呼び掛ける。

日本農業新聞

最終更新:5月11日(水)12時30分

日本農業新聞