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北朝鮮党大会、新味なし 米国は政権転覆を模索も

ニュースソクラ 5月11日(水)16時0分配信

やせたハリネズミになる北朝鮮

 北朝鮮が36年ぶりに開催した第7回朝鮮労働党大会は、新しい政策はほとんど打ち出せず、確認したのは、途方もない金がかかる核開発を続け、経済開発も進めるという矛盾に満ちた「核・経済の並進路線」だけだった。

 核開発継続を宣言したため、米国や韓国との対立はますます深刻化するだろう。北朝鮮は、当分の間、核とミサイルでとげとげしく武装した「痩せたハリネズミ国家」の道を進むことになりそうだ。

 120人もの外国報道陣の訪朝を許可しながら、党大会の日程も教えず、大会会場にも入れない。自分たちがPRしたい産院や住宅だけ案内する。北朝鮮当局のこんな姿勢は、世界の視聴者や読者に十分、「異様な国家」像を植え付けただろうが、さらに問題なのは大会で最高指導者の金正恩氏が、中央委員会事業総括の中で話した内容だ。

 自分が祖父や父の正統な後継者であり、いかに核やミサイル開発で成果を収めたかを宣伝するばかり。米韓合同軍事演習の中断や在韓米軍撤収、朝鮮戦争の停戦協定に代わる平和協定の締結を米国に求めたが、これは北朝鮮が一貫して主張してきた内容で、まるでタイムマシンで36年前に戻ったような錯覚を覚える。

 正恩氏は、「世界の非核化」にも言及した。これを新しい発言として取り上げたメディアもあったが、これまでと表現を変えただけだ。世界の核保有国の間で軍縮を行うのなら応じるが、「朝鮮半島の非核化」つまり、北朝鮮だけが核を放棄することはありえないと言っている。今までと何も変わっていない。

 北朝鮮国内でも期待の高かった、経済部門を見てみよう。正恩氏は、過去の業績を強調する一方で、「人民経済部門の均衡が取れておらず、経済発展に支障を与えている」と問題点を指摘した。一部の先端技術では先進国並みの力があるものの、食料品や日用品の生産もままならない、いびつな現状を指すものだろう。問題意識は正しい。

 その上で、「国家経済発展5カ年戦略」(2016~2020年)に言及した。正恩氏は、4大先行部門(石炭、電力、金属、鉄道)と基礎工業部門を軌道に乗せ、農業と軽工業生産を増やすことで人民生活を向上させるものだと説明した。ただ、それ以上の詳しい内容は不明で、「単に経済の方向性を示しただけの可能性がある」と韓国の専門家は指摘している。核開発はかなり進んでいるのだろうが、経済の浮揚は、相変わらず望み薄だ。

 南北統一に向けた新たな提案があるとの事前の観測もあった。国際的な孤立を打破するには、韓国との対話再開が一番近道だ。韓国からの支援も期待できる。正恩氏は、確かに、「祖国の自主的統一を成し遂げるうえで現時期、差し迫った問題は北南関係を根本的に改善すること」と、かなり目立つ表現で強調した。

 ところが、統一の方法として口にしたのは、祖父、父時代からの対韓国・統一政策である「祖国統一3大憲章」だった。これは1972年7・4南北共同声明で提示された祖国統一3大原則、1980年10月第6次党大会で提示された高麗民主連邦共和国創立方案、1993年4月最高人民会議第9期第5次会議で提示された全民族大団結10代綱領を指す。北朝鮮はこの用語を1997年から公式に使っている。独自色は全くなく、韓国政府内には失望が広がった。

 それでも党大会開催という重圧から解放された正恩氏に、期待をかける人たちもいる。対話や外交を活発化させ、強硬路線を事実上修正していくのではないかーというものだ。

 私はとても期待できないと感じている。今後、5回目の核実験を強行し、ミサイルの発射を繰り返すようなことがあれば、今度こそ、米国をはじめ関係国は、正恩氏を政権の座から引きずり降ろすための方策を探り始めるだろう。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にしたが、現在は連絡が途絶えている。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

五味 洋次

最終更新:5月11日(水)16時0分

ニュースソクラ