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社説[オバマ氏広島へ]被爆者との対話実現を

沖縄タイムス 5月12日(木)5時0分配信

 オバマ米大統領が今月27日、広島を訪問する。
 人類史上唯一、原爆を投下した国の大統領が、唯一の戦争被爆国の象徴的な場所に足を踏み入れる「歴史的訪問」である。
 任期中に日本を訪れる最後の機会となるであろう主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の後、広島に向かう。平和記念公園を訪れ、核廃絶に向けた「思い」を表明する予定だ。
 米国では、原爆投下が戦争の終結を早め、多くの命を救ったとの考えが根強い。原爆投下機エノラ・ゲイと被爆の惨状を示す資料を展示する予定だったスミソニアン博物館企画の原爆展が、退役軍人らの猛反対で中止に追い込まれたのは戦争から半世紀もたった1995年のことだった。大統領の被爆地訪問に反発する声は依然としてある。
 広島訪問を巡って、ホワイトハウスがあらかじめ謝罪を意図するものではないと強調するのは、そうした事情があってのことだろう。 
 しかしそうであっても、米国の現職大統領が初めて被爆地を訪ね、犠牲者を追悼することに大きな意義がある。
 オバマ大統領は2009年4月、チェコのプラハで演説し、核兵器を使用した唯一の国として「米国には道義的な責任がある」と語った。
 大統領には米軍機が落とした1発の原子爆弾によって地上で何が起きたのか、広島でしっかり感じ取ってほしい。
 今も後遺症に苦しむ広島の被爆者の声に耳を傾け、長崎の被爆者からも話を聞いてもらいたい。
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 核なき世界の提唱でノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領だが、プラハ演説後に高まった核軍縮への国際的機運は、急速にしぼんでいる。
 ロシアがウクライナ南部クリミア半島の編入を強行したことで米ロが対立し、事態が暗転。昨春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、非核保有国と核保有国の対立が先鋭化し、最終文書をまとめられなかった。
 一方、北朝鮮は核兵器、ミサイル開発を加速させ、先日の朝鮮労働党大会では「核武力を一層強化していく」と宣言するにいたっている。
 唯一の戦争被爆国として、核兵器の廃絶を訴える日本も、現実には米国の「核の傘」に頼るという、政策の矛盾を整理できないでいる。 
 足踏み状態の核軍縮を前に進め、核なき世界に向けた行動が問われているのは、日本も同じだ。
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 非核保有国である日本と韓国は米国の「核の傘」に頼り、米軍の東アジア展開を深刻な脅威と感じる北朝鮮は核開発を急ぎ、自らを「核保有国」と位置付ける。米国はこの東アジアの危機に、どう対応しようとしているのか。
 オバマ大統領の広島訪問の意義が、「核兵器なき世界」の実現へメッセージを発信することだとするならば、核兵器の非人道性を明言し、東アジアの緊張緩和に向けたアピールを出してほしい。
 どんなに困難であっても、核に頼らない世界共通の安全保障の仕組みを目指さなければならない。

最終更新:5月12日(木)5時0分

沖縄タイムス