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錦織はティームの猛攻を振り払い、ジョコビッチとの準決勝へ [ローマ/男子テニス]

THE TENNIS DAILY 5月14日(土)17時0分配信

 イタリア・ローマで開催されている「BNL イタリア国際」(ATP1000/5月8~15日/賞金総額374万8925ユーロ/クレーコート)は13日、男子シングルス準々決勝が行われ、第6シードの錦織圭(日清食品/6位)が第13シードのドミニク・ティーム(オーストリア/15位)を6-3 7-5で下し、準決勝に駒を進めた。

 錦織は準決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア/1位)と対戦する。ジョコビッチは準々決勝で第5シードのラファエル・ナダル(スペイン/5位)を7-5 7-6(4)で破っている。ジョコビッチと錦織の試合は14日、センターコートの第4試合、現地時間20時00分以降に予定されている。

錦織がティームを下してジョコビッチとの準決勝へ [BNL イタリア国際]

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 錦織は、以前にティームと対戦したときのことを覚えていなかった(2015年ハレで対戦、7-6(4) 7-5で錦織が勝利)。

 しかしこのローマの夜のあとは、もう決して彼との、この試合のことを忘れることはないだろう。

 難しい試合になることは、最初の瞬間から予感された。非常に無頓着なやり方で、フォアハンドの強打を炸裂させる“噂のティーム”は、その才能で、夜空の下のコートを輝かせた。

 第2ゲームで、ティ―ムが無造作に叩いたバックハンドがダウン・ザ・ラインに決まると、会場がどっとどよめく。ティームは、どちらかといえば細身に見える体から、電光石火のショットを連射し、かと思えば、ネット側に戻るかと思うような精度のドロップショットで、不意打ちを食らわせた。

 第3ゲームには、ティームがライン近くに打ち込むフォアハンドがコート内に入り始め、ノータッチエースや、錦織が押されて返球できない場面が見られ始める。アウトすらが、いちいち観客席を沸かせたのは、それが入っていたらいかに恐ろしいかが、皆にわかっていたからだろう。4回のデュースを繰り返したこのゲームで、アドバンテージを握ったティームは、錦織をドロップショットで前におびき出し、パスでボレーミスを強いて、サービスブレークに成功する。しかし錦織はこのあたりから、成熟した選手としての、駆け引きの能力を見せ始めた。

 強打とドロップショットを巧みに混ぜ、2-3からの第5ゲームでブレークバックに成功した錦織は、単調に後ろから打ち合う代わりに、今度はネットをとって、ボレーやスマッシュでポイントを稼いだ。無鉄砲な若いエネルギーと経験の、ピリピリした競り合いは続くが、錦織は、出だしのティームの爆発にも比較的落ち着いて対処したように見え、それによってティームのミスも増加。自分側のミスを減らし、ティームにミスをさせる形で、錦織は結局このセットを6-3でものにする。

「ずっと試合が終わるまで、あまり心地いい感じはなかった。ミスもあったが、入ると非常に厳しくて重いショットを打ち込まれ、なかなか自分で主導権を握れないなと、ずっと思っていたし、そういう中で我慢しながらプレーしていた。少し自分が悪くなれば、あっちに流れがいくだろうことはわかっていたから、耐えながらプレーしていた」と試合後、錦織は打ち明けている。

 第2セットに入っても、激しい凌ぎ合いは続いた。錦織はプレースメントや球種で相手を振りつつ、しっかりとボールを返し、チャンスでは叩く賢明な戦略で、ティームの無鉄砲なパワーに対抗しようとする。しかし『入ると怖いフォアハンド』で攻める姿勢を変えないティームも、一歩も引かず、拮抗した展開は最後まで続いた。

「すごく大きいミスが彼の側にあったのが、彼の調子の問題なのかはわからないが、結構自分も重いボールをしっかり打てていたと思うので、彼を焦らせたり、ミスさせた部分もあったと思う。でも、難しい相手だった。どうプレーしたほうがいいのか、正解が最後までなかなか見えなかった」と、錦織は暗中模索しながら進んだこの試合を振り返った。

 ティームは断続的にスーパーショットを見せており、ストローク戦では幾分押し気味だったが、錦織はそれでも重要なポイントで、バックハンドのダウン・ザ・ラインなどの目覚ましいショットを繰り出し、サービスをキープしていた。そしてティームにミスが続いた5-5からの相手のサービスゲームで、錦織がついにブレークを果たす。

 6-5からの最終ゲームでも競り合いは続き、ティームのフォアハンドの逆クロスのエースが決まって、ブレークポイントを握られる場面さえあったが、錦織はしっかりと踏み堪えた。最後はティームのミスが3本続き、騒然とした雰囲気の中、試合の幕は下りた――。

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「ローマで初の準決勝進出を果たせてうれしい。非常に厳しい相手に対し、いい試合を戦うことができた。彼には弱点というものがあまりない。フォア、バック双方から重いショットを打ち込んでくる、厳しい相手だった」と試合後、錦織は言った。

「今日の試合は、グラウンドストロークの戦いだったが、いくつかの局面でいいプレーができた思う。彼は素晴らしいキックサービスを打つ選手なので、リターンのポジションを下げるなどして調整することが必要だったが、リターンはよかった」という錦織は、手探りで進んだこの日の対策について、次のように分析した。

「彼はバックが目立つが、フォアのほうが威力もあるし、左右に打ち分けられる。最初たぶんフォアに集めすぎて、彼のプレーをよくさせていたので、途中からやっと気づいて、フォアをしっかり使って高めのボールを彼のバックに集めたり、左右に打ち分けたりすることが徐々にできるようになった。たぶん一方向に集めすぎないのが、作戦としては一番必要だったかなと思う」

 確かなことは、トップ5復帰を目指す錦織が気にしなければならないのは、ジョコビッチやナダル、アンディ・マレー(イギリス)だけではないということである。ティームやニック・キリオス(オーストラリア)など、今、新しい勢力がぐんぐん成長しながら、爪を研ぎつつある。

 試合後、ティームは「自分のベストのテニスをすれば、僕は錦織を倒せる。誰だって倒せる。彼のようなトップ選手を倒すには、自分のベストのテニスをする必要があるが、今日の僕にはそれができていなかった」と、トップ全員に密やかに挑戦状をつきつけていた。

 ところで、錦織は第2セット2-3のチェンジエンドの際に、股関節に違和感を覚え、メディカル・タイムアウトをとってコートの外に出ている。戻ってくるなり、ローマの観客たちが「雷光のよう」と表現したフォアハンドのダウン・ザ・ラインのエースを繰り出し、わずか30秒で自分のサービスをキープしたのだが、腿にアイシングをしながら会見場に現れた錦織は、気になる故障に関し、「たぶん2セット目の初めに痛みを感じたので、すぐテープをしてもらった。明日になってみないとわからない部分もある」とやや不安を残す発言をした。

 その上で、14日の対ジョコビッチ戦に視線を向けた錦織は、「先週のように、我慢しながらチャンスをみてアグレッシブにもプレーして、という展開がたぶんベストだと思うので、そういう形でできるよう頑張りたい」と意欲を見せる。錦織は、前週のマドリッド準決勝でジョコビッチと対戦して(3-6 6-7(4)で敗退)、戦い方のヒントが薄っすらと見えた、としていた。

「常に厳しい相手だけれど、先週いいプレーができているだけに、少し光は見えている。体調さえ戻れば、可能性のある試合ができるんじゃないかと思う」と錦織は言う。2週連続の挑戦は、あと数時間後にやってくる。

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【男子シングルス準決勝】※[ ]数字はシード順位

ノバク・ジョコビッチ(セルビア)[1] vs 錦織圭(日清食品)[6]

ルカ・プイユ(フランス)vs アンディ・マレー(イギリス)[2]

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)

Photo: ROME, ITALY - MAY 13: Kei Nishikori of Japan in action against Dominic Thiem of Austria during day six of the The Internazionali BNL d'Italia 2016 on May 13, 2016 in Rome, Italy. (Photo by Matthew Lewis/Getty Images)

最終更新:5月15日(日)0時8分

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