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社説[復帰44年 辺野古では]脅かされる自治と人権

沖縄タイムス 5月15日(日)5時0分配信

 憲法が適用されていなかった米軍政下の沖縄に初めて、「憲法記念日」が設けられたのは51年前の1965年5月3日のことである。「日本国憲法の沖縄への適用を期する」という沖縄住民の切実な願いが込められていた。
 72年の施政権返還によって憲法とともに、日米地位協定も本土並みに適用されるようになり、米軍基地が集中する沖縄は、「憲法体系」と「安保体系」が日常的に摩擦を起こすようになった。
 施政権返還からきょうで44年。その現実は今も変わらない。その象徴が「辺野古」である。
 名護市辺野古沖で沖縄防衛局発注の海上警備を請け負う民間の警備会社が、新基地建設に反対し抗議行動を展開する市民の名前を特定し、行動を記録していることが分かった。
 約60人分の顔写真や名前を記したリストが存在するというから驚きだ。警備員は船やカヌーに乗った市民をカメラに収め、画像をリストと照らし合わせ、行動を記録していたという。
 沖縄市にあるこの警備会社は、沖縄防衛局から警備業務を受注している会社(東京)の100%子会社。防衛局はそのようなことまで指示したのだろうか。この行為は表現の自由に重大な萎縮効果を及ぼすだけでなく、肖像権やプライバシーの侵害行為にあたる可能性も強い。
 「安保体系」が優先され、人権や地方自治を定めた「憲法体系」が脅かされている現実を浮き彫りにした事例だ。
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 陸上自衛隊の情報保全隊が、イラク派遣に反対する人たちを監視し、個人情報を収集していたことが問われた訴訟で、仙台高裁は今年2月、自衛隊による国民監視の事実を認め、原告男性1人のプライバシー侵害を認めた。
 防衛省は上告を断念、違法判決が確定している。情報収集を当然視する自衛隊に対し、司法が警鐘を鳴らしたのである。
 69年12月に出た京都府学連事件の最高裁判決は、憲法13条を根拠に肖像権を認めた初の判決となった。デモ行進に参加している人たちであっても「みだりにその容貌・姿態…を撮影されない自由」を認めたのである。
 今回の辺野古のケースは、過去の各種判例から判断しても違法性が強い。
 沖縄で「憲法体系」と「安保体系」のきしみが耐え難いほどひどくなったのは、軍政下に米軍によって一方的に建設された普天間飛行場を、民意に反して強引に県内に移設しようとするからだ。
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 憲法が保障する人権や地方自治を本土並みに享受する。安保が必要だと言うなら全国で負担を分かち合う。沖縄の主張の最大公約数は、実に慎ましやかなものだ。
 米軍基地を沖縄に押しつけるだけでは、問題は何も解決しない。
 米軍を法的にコントロールするため米軍に国内法を適用し、政治的にコントロールするため日米合同委員会を国会が監視し統制する。その仕組みづくりがほんとうの「主権回復」に向けた第一歩だ。

最終更新:5月15日(日)5時0分

沖縄タイムス