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社説[復帰44年 格差と貧困]世代間連鎖断ち切ろう

沖縄タイムス 5月16日(月)5時0分配信

 沖縄の施政権が米国から日本に返還され、44年。復帰っ子といわれる1972年生まれは子育てに仕事に忙しい世代となり、その親たちは定年し高齢者と呼ばれる世代となった。県の人口構成比は、復帰前世代と復帰後世代がほぼ同数となっている。
 本土との格差を是正しようと始まった沖縄振興計画の中心は、社会資本の整備と産業振興だった。
 すっかりきれいになった街並みや観光地のにぎわいは格差是正を実感させるが、「箱物」中心の振興と生活への目配りを欠いた計画が、社会の弱い部分を直撃している、と感じることが増えている。
 昨年から今年にかけて県民の関心が急速に高まっているのは、自分ではどうすることもできない状況に置かれた子どもたちの貧困である。県の調査で、3人に1人が貧困状態にあることが明らかになった。
 しかし深刻なのは子どもだけではない。ひとり親世帯の相対的貧困率は約6割と高く、働く人のおよそ2人に1人が非正規雇用で、経済的に不安定な生活を送っている。
 切実なのは高齢者も一緒だ。県内高齢者の生活保護受給割合が全国で2番目に高いのは、米軍統治下にあった影響で年金制度への加入が遅れたことと深く関係している。
 子は親を支えきれず、親も子を頼れない。
 子世代、親世代、祖父母世代と、貧困が沖縄社会に「面」として広がる現実は、沖縄振興計画に、その視点が乏しかったことを物語る。
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 地域の経済力を示す1人当たり県民所得は、復帰時に41万9千円で、2013年度は210万2千円と大きく増加している。全国平均の57・8%から73・9%まで差を縮めたのは、県経済の成長と県民の努力によるものだ。
 それでも全国最下位から脱出できないのは、労働生産性の低さなどが要因とされるが、気になるのは高所得層との間に広がる県民間の所得格差である。総務省の全国消費実態調査(2009年)によると、沖縄は貧富の差を示す「ジニ係数」が全国一高い。
 経済的に優位にある層から貧困は見えにくく、貧困にあえいでいる人ほどSOSを出しにくい。互いに助け合う「ゆいまーる」精神がうまく機能しなくなっていることが、格差の広がりに拍車をかける。
 家族に頼れず、地域からも孤立した状況に、今の貧困問題の深刻さがある。
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 復帰後の沖縄振興計画に、子どもへの視点が欠けていたことの指摘が強まり、本年度、沖縄振興予算に子ども貧困対策事業が盛り込まれた。沖縄戦から続く米軍統治の歴史と基地問題が影を落とす「格差と貧困」対策に国がようやく動きだした。
 県独自の調査で、子どもの貧困の実態を可視化してきたように、地続きにあるワーキングプアや高齢者の貧困問題の全体像を正確に把握する必要がある。
 世代間連鎖が進む貧困問題を、21世紀ビジョン基本計画後期の優先課題に位置付けるべきだ。

最終更新:5月16日(月)5時0分

沖縄タイムス