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ギャンブル障害の現実 人生を棒に振った人をただ責めればそれでいいのか?

BuzzFeed Japan 5月16日(月)10時59分配信

「心が弱いと責めるだけでは、何も解決しない」

4月8日、東京都内で開かれた記者会見場。違法カジノへの出入りが報じられた、男子バドミントン界のスター、桃田賢斗選手はこう語った。「自分もスポーツマン、勝負の世界で生きているので、ギャンブルの世界に興味があった。やめることができなかった」【石戸諭 / BuzzFeed Japan】

桃田選手を誘ったとされ、所属していたNTT東日本を解雇処分となった田児賢一選手は違法カジノには度々出入りしていただけでなく、ギャンブルのためにNTT東男子バドミントン部内で1000万円を超える借金を重ねていたことが明らかになった。
「スポーツと同じ勝負の世界だから」「自分を止められない弱さがあった」。彼らは口々にそう語った。

彼らがあげた理由は一見、納得する。しかし、本当に彼らの言葉だけでわかった気になっていいのだろうか。

果たして、スポーツ選手はギャンブルにはまりやすいのか。「ギャンブル依存症」という言葉も広がっているが、その実態はどこまで知られているのか。

BuzzFeed Newsはまだ日本では少ない「ギャンブル依存症」の専門家を訪ねた。

「こころのホスピタル町田」の精神科医で、ギャンブル依存症専門外来で治療に取り組む蒲生裕司さん。最前線で、治療に取り組み治験を積み重ねている。

パソコンと専門書、自身が書いた論文が置かれた机に座り、蒲生さんは口を開いた。
「医学的にはギャンブル依存症という言葉ありません。依存症というのは、アルコールやその他の薬物に対して使う言葉で、私たちの間では、病的賭博あるいはギャンブル障害と呼んでいます」

「ギャンブル障害の患者には脳に変化が起きていると考えられています。ギャンブルに関する情報にのみ、脳が反応する可能性が指摘されているのです」
ギャンブル好きと障害、違いをどう診断していくのか。

「ギャンブル障害には診断基準があります」

「例えば、賭博にのめり込むために嘘をつく、日常生活に支障をきたす、同僚のお金を取るなど賭博のために人間関係や仕事の機会を危険にさらしたり、失ったりする。しばしば、賭博に心を奪われているーーといったものです」

「しかし、単純に診断基準にあてはまるかどうかではなく、個人の状況を加味して診断していくのです」
スポーツ選手はギャンブル障害になりやすいのか。
蒲生さんが言葉を選びながら、ゆっくりと口を開く。

「海外では、かつてアスリートだった人が特定のギャンブルについて、アスリートでなかった人よりもはまりやすい傾向にあった、という研究結果があります。しかし、十分なエビデンスは存在しません。現に、多くのスポーツ選手はギャンブルにはまり込んでいるわけではない。むしろ問題は……」

ここで、蒲生さんの口調が少し強まる。
「男子バドミントンやプロ野球選手の賭博問題をとらえて、『スポーツ選手なのに心が弱い』あるいは『将来があるスポーツ選手なのにギャンブルをやるなんて情けない』といって責めたてる考え方にあるとおもいます。ギャンブル障害を誤ってみています」

彼らがギャンブル障害かどうかは、直接診察をしないとわからない。しかし、明確に批判できるのは、ギャンブルにはまり込んだ彼らの「心の弱さ」を原因にする考え方そのものだ。

必要なのは、ギャンブル障害に関する正確な理解だ。

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最終更新:5月16日(月)10時59分

BuzzFeed Japan

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