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ブラジル テーメル暫定政権が受け継いだジウマ政権の莫大な負の遺産

ニッケイ新聞 5月16日(月)20時25分配信

(ブラジル邦字紙「ニッケイ新聞」14日付けコラム「樹海」より)

12日は歴史に残る日だった――。朝6時半、レナン上院議長は先日の午前10時から20時間あまり続いた徹夜の罷免審議の最後に、「憲法に基づいて、両側の意見をじっくりと聞きながら進められた長くてドラマチックな審議が、ようやく最後の段階を迎えた。さあ投票を!」と呼びかけた。すると電光石火、パネルに「Sim55 Nao22」という数字が浮かんだ。大統領停職が決まったと同時に、180日以内の審議期間の末にもう一度行われる最終弾劾採決の時に必要な3分の2が、すでに集まっていると分かった瞬間だった。ジウマ復活は難しい情勢だ▼

とはいえ、テーメル暫定政権の道は厳しい。9日付エスタード(E)紙が「記念碑的な大負債」と表現するほどの国庫の〃大穴〃を、ジウマ政権は残していったからだ。その額は公式には1千億レアル(約3兆1千億円)ていどだが、E紙が専門家に依頼して算出したところ2500億レ、米格付け会社ムーディーズ(M)は6千億レアルと見積もる▼

ブラジルはGDPの70%近い財政赤字をすでに持っているが、M社は18年には90%になると予測。というのも、ジウマ政権のエネルギー政策大失敗により、ペトロブラスとエレトロブラスが崩壊の危機にあり、その救済だけで3千億レ。さらに心配なのは公立銀行CaixaとBNDESに隠された負債で、その救済には最悪6千億レかかる可能性があると指摘する▼PT政権が格差是正の錦の御旗を振りながら、半分選挙対策のバラマキ政策を繰り返した結果、とんでもない「負の遺産」が残された。それをどう処理するかが、テーメルに課せられた最大の使命だ。早速、大臣指名では31人から23人に大幅に減らし、官庁大削減を実行した▼

彼の使命は、国家財政がどれだけ重症かを見極め、患者(国民)に病状をしっかり認識させ、〃苦い薬〃(公共サービス削減、いずれは増税)を呑ませることだ。その使命を忠実に果たせば果たすほど、彼の人気は落ちる▼

テーメルが最初から「自分は18年の大統領選挙にでない」と宣言しているのは、次なる民主社会党政権が経済成長する土台をつくる役割を認識しているからだろう。選挙なら大統領にはなれなかったことは、テーメル本人が一番分かっている。大統領罷免という歴史的な場面だからこそ、代行する役割がまわって来た▼

 悪党クーニャが下院議長の職責を最高裁判断で剥奪されたのは、彼の使命である「下院で大統領罷免審議を通す」役割を終えた直後だった。テーメルに最高裁からの何かの判断が下るとしても〃役割〃を終えた後かも▼

 政治家であれば誰もやりたくない、国民に苦い薬を飲ませる役割を果たした後に容疑がもたれるのであれば、クーニャ同様に「悪党だがヒーロー」、二律背反な存在になる▼

欧米との交易拡大を図る華々しい役割が科せられた外務大臣にジョゼ・セーラが就いたのは、どこか〃最後の花道〃的な雰囲気が漂う。加えてLJ作戦の進展次第で、次の大統領選挙で本命のアエシオ(PSDB)が立候補できない可能性がある。ルーラ逮捕もありえる。そうなるとマリナ対アウキミン、サンパウロ州知事の図式も。マリーナはカリスマ的だが政権運営の実績はゼロ。その時に、「カリスマ性より実務能力や経験」という気運になっていればアウキミンはありうる▼

とはいえ、野党としてのPTはあまりに強力であり、いろいろ仕掛けてくるに違いない。まったく別の筋書きもありえる。ブラジルほど「一寸先が闇」という言葉が似合う国はない。上院投票直後、窓の外をみたら明るくなり始めていた。ふと、本当の夜明けはいつ来るのか―と考え込んだ。

最終更新:5月16日(月)21時52分

ニッケイ新聞

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。