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300年以上続く小豆島の伝統行事「肥土山農村歌舞伎」の舞台裏/香川

Webマガジン コロカル 5月16日(月)14時46分配信

小豆島日記 vol.148

コロカル・Web連載【小豆島日記】とは?
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

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■みんなでつくる、つないでいく、伝統の舞台

1週間前からその日の天気予報がずっと気になってました。5月3日。年に一度の村の伝統行事、肥土山農村歌舞伎の日です。

晴れマークが続いているのに、なぜかその日だけ雨。それもテレビのニュースでは大荒れになるとも。どうにか雨の時間がずれますようにとずっと願っていました。

こんなに天気のことを気にするのは年に数回あるかないか。というのも、農村歌舞伎は屋外の舞台で行われます。舞台には屋根がありますが、観覧席(桟敷)には屋根もないし、もちろん椅子なんかもありません。地面にゴザを敷いて座ってみます。気持ちのいい気候のなかで、お弁当を広げて、家族や友人たちとワイワイしながら歌舞伎を見る。それをしてもらいたい~!

そして迎えた当日。朝起きると昨日までの暑いほどの晴天が一変。空は曇り、ビュービューとすごい風。なんでよりによってこの日に。

まぁでも、天気だけはどうしようもない。あとはひどくならないことを祈り、舞台に向かいました。

年に一度のこの日のために、多くの人が関わり準備を進めてきました。表に立つ役者さんだけでなく、裏を支える人たちがたくさんいます。すべてのとりまとめをするのは、今年の担当組の組長さん。今年はそんな天気予報だったので、地元の大工さんたちが仮設だけども強い風にも負けない屋根を組んでくれました。そしてお母さんたちは、毎回稽古のときにお茶やお菓子を用意してくれたり、当日も朝2時台からみんなのお弁当づくり。着付け、化粧、音響、大道具……、みんなそれぞれの役割を担います。

300年以上続けてきたなかでできあがったこの仕組みはほんとに強い。仕組みというかチームというか。

何をどうやって進めていくかというマニュアルなんてなくて、先輩たちの姿を見て、後輩たちが引き継いでいく。なんで自分がやらないといけないのか? と疑問に思うこともなく、当たり前のように自分の役割を担う。

今回いろは(娘)は子ども歌舞伎に出演したのですが、一緒に役者をした子のお母さんがこんなことを言ってました。「いまはまだお弁当つくれてるけど、年々人の数が減ってるから、そのうち担当組のお母さんたちだけでつくるのが難しくなるよね。そしたら市販のお弁当にするのもありかもね。でも一緒にお弁当つくりながら、話したりするから仲良くなるんだよね~」

まさに!歌舞伎という共通の目的をもってともに時間を過ごすことで、お互いのことを少しずつ知っていく。つながりができていく。

私たち家族にとって4回目の肥土山農村歌舞伎が無事に終わりました。大嵐のなかでの歌舞伎はきっと記憶に残るんだろうなぁ。あの年の歌舞伎は大変だったね~なんて言いながら思い出しそう。来年こそは晴れますように。そしてまたみんなで歌舞伎の歴史をつないでいけますように。


writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。

最終更新:5月16日(月)14時46分

Webマガジン コロカル