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個人投資家が機関投資家の「アルゴリズム」「超高速取引」に勝つためにすべきこと

ZUU online 5月17日(火)10時10分配信

個人投資家なら、大きなニュースが出ていなくても株価500円以上動いたり、為替が急速に円高になったりと原因のよくわからない乱高下があると感じたことはないだろうか。このような動きの原因の一つに「超高速取引(HFT)」と呼ばれる1秒間に1000回以上の売買があるとされ、金融庁がその規制に乗り出すことを検討している。

高額の機材を使って取引している機関投資家には、個人投資家では到底太刀打ちできないと思われそうだが、少なくともこの高速取引に惑わされないためにすべきこと、できることはある。

■市場の方向性を加速させるアルゴリズム取引

コンピュータが株式・債券・FXなどで値動きや出来高、板やティッカーなどを見ながら自動的に注文を繰り出すシステムトレード。アルゴリズム取引ともいわれ、 コンピュータで注文を小刻みかつ超高速で高頻度に発注する。機関投資家が大きな注文をした際に、市場へのインパクトが大きくなり過ぎないようにすることなどを目的に導入された。

その技術は年々高まり、いまでは1/1000秒レベルの高速取引が可能になった。その結果、当初の目的以外にも使われるようになってきている。アービトラージ(裁定取引、さや取り)のファンド、イベント・ドリブン系やトレンドフォロー系のヘッジファンドなどにも多用されるようになってきており、その仕組みが分かっていないものも多い。このイベント・ドリブン系とは、倒産や合併などの“イベント”を狙って売買して利益をあげようとするファンドのことを指す。

イベント・ドリブン型のHFTとは、ロイターやブルームバーグなど主要金融ベンダーが出すイベント関連のニュースの中で、ヘッドラインのキーワードを自動的に読み取り、超高速で発注するシステムだ。スピード勝負なので、内容などはあまり関係ないといわれている。仕掛けて他のトレーダーが追随してきた時、“反対売買”できればいいのだ。

■4月22日の急騰は追加緩和ニュースがきっかけ

4月22日は、前日のNYダウが100ポイント以上下げていたこともあって、日経平均は140円安で寄り付き、午前中は冴えない展開だった。ドル円は、海外で110円直前まで円安がすすんだものの110円の節目を前に跳ね返され、109円の前半で小動きだった。

相場が一転したのは、13時半にブルームバーグが「日銀:金融機関への貸し出しにもマイナス金利を検討-関係者」と伝えた事がきっかけだ。この報道でドルは急騰し4月6日以来の110円を突破、ストップロスオーダーを巻き込みながら一時110.60円をつけた。日経平均も午前中のマイナスレンジから急騰、208円高で引けている。一日の値幅は380円に達したのだ。

アルゴリズムは「BOJ said(日銀いわく)」に反応する?
今回の「日銀:金融機関への貸し出しにもマイナス金利を検討-関係者」という報道では、英文でも「BOJ Officials Are Said to Eye Possible Negative Rate on Loans」いうヘッドラインが流れた。市場が大きく動くきっかけをつくったHFTのアルゴリズムは、おそらく「BOJ(日銀)」「Said(いわく)」「Negative Rate(マイナス金利)」を読み取り、売買が執行されたのだろう。イベント・ドリブン型のHFTは、FXや日経平均先物などいろいろな商品を組み合わせて、目に見えないようなスピードで発注を繰り返すのだ。

今回のキーワード以外でも、「FRB(連邦準備制度理事会)」「ECB(欧州中央銀好)」「EASE(緩和)」「TIGHT(引き締め)」「HIKE・RISE(上げる)」「LOWER・CUT(下げる)」などを自動的に読み込むと見られている。

過去にも、こういった動きは何度も起きている。代表的な例が、1月29日の日銀が決定会合でマイナス金利を導入した時の動きだ。情報ベンダーから「日銀マイナス金利導入」が流れると、「日銀」「マイナス金利」に反応したと思われるHFTのFX・日経先物の発注がトリガーとなり、日経平均は一時600円高、ドルも121円まで急騰した。これがアルゴリズム取引の初動だ。

その後、専門家のコメントで、銀行株の収益にはネガティブなこと、欧州ではマイナス金利導入も通貨高は解消されていないことなどが伝わり始めると、為替も日経先物も逆回転をはじめ、日経平均は600円高から約270円安まで急落、ドルも121円台から119円台前半まで急落した。まさにアルゴリズムが市場を振り回した典型例だ。

■スピードではかなわない分、内容をしっかり判断

HFTのアルゴリズム取引が増えてきたことで、相場の変動率も上がっている。2015年の日経平均の前日比の変動幅は平均179円だったものが、2016年は4月末までで265円と値幅で86円、率にして48%も増えた。

毎月のように、日銀の追加金融緩和期待、いわゆる「日銀トレード」など相場が動き、期待が外れると下げるという展開に振り回されている。

アルゴリズム取引が相場変動のトリガーになってしまうことは仕方ない。最大の対処方法はアルゴリズム取引とスピード競争をしないことだ。スピードと資金量ではアルゴリズム取引に勝てるわけがない。嵐の時は静観する勇気も必要だろう。

個人投資家ができる事は、重要な政治・経済イベントや経済指標の前にストラテジストの意見や市場のコンセンサスなどを参考に自分の考え方を整理しておくことだ。そして、ヘッドラインで短期的に動くのでなく、Twitterを見て情報収集するなど内容をしっかりと判断して、自分の考え方に沿って中長期的な立場から投資行動を起こすことが大切だ。「そんなカンタンなこと?」と思われるかもしれないが、少なくとも自分で判断するための情報収集をして判断をすることが大切なのだ。

平田和生
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

最終更新:5月17日(火)10時10分

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