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【千葉魂】 41歳大ベテランの存在感 ヤングマリーンズ支える井口

千葉日報オンライン 5月17日(火)11時54分配信

 指揮官の目には、気の緩みを感じた。プレーにミスがあったわけではない。怠慢プレーをしたわけではない。ただ、若手選手たちの闘う姿勢に不満があった。もっとガツガツとした姿を見せてほしい。だから、開幕から3カード目。京セラドームのオリックス戦初戦の試合後に若手選手を集めると、そのことを厳しく指摘した。一年間は長い。開幕した時期に調子が良くても、必ず落ちる時期が来る。だから慢心してほしくなかった。そして調子が悪いからといって、なんとか、もがき、はい上がろうという姿勢を見せてほしかった。

 「どうしても今の若い選手には、そういうところがあるよね。調子がいい時はハツラツとしているのだけど、少し落ちたりしたらシュンとする。そして逆もある。少し調子がいいと錯覚をすることがある。一年は長いからね。山あり谷あり。そういうことをしっかりと教えてあげたいと思っている」

 若手選手の打撃練習を見ながら、伊東勤監督はつぶやいた。マリーンズの指揮官として、激励をしては叱咤(しった)をする。いつも若手選手の様子を見ながら状況を見分けながら、それを繰り返し、チームに刺激を与えている。

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 今季、初めて若手に苦言を呈した大阪の夜、忘れられない出来事があった。試合後に若手に喝を入れた後、41歳のベテランから申し入れがあった。「彼らを食事に誘ってもいいですか」。若手に心のフォローをしてあげたいというベテランの心配りだった。その意図をすぐに察した指揮官は「ちょっと、いろいろと話をしてあげてくれ」と快諾した。井口資仁内野手のその思いがなんともうれしく頼もしく感じ、感謝をした。

 その時のことを井口は振り返る。「監督と同じように感じていた部分もあったしね。彼らをなんとかしてあげたいという思いがあった。食事に連れて行くことで、いろいろなことを伝えることができればと思ってね。なにかヒントになるような話ができればと思った」。もちろん、ロッカーやベンチでアドバイスをすることもある。でも、食事をしながら、じっくりと話をすることが大事だと感じた。だから、若手たちを連れて食事にでかけた。美味しい牛タンに舌鼓を打ちながら、たわいもない会話もしながら、野球の話をする。じっくりと時間をかけて話せることもあるし、普段は遠慮をして質問をできない若手を和ませることで自分たちから疑問に思うことを積極的に聞いてほしかった。

 「若い子たちに成功してほしい。今、彼らに足りないのは引き出しの数かな。自分はそれを増やしてあげる手助けができればと考えている」

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 井口もまた若い頃、同じ経験をした。何度も壁にぶち当たった。そのたびにホークスのスター選手であった秋山幸二氏、小久保裕紀氏たちに声を掛けられ、食事を共にすることでいろいろな話を聞いて勉強をし、成長をした。そして野球の引き出しを増やし、いろいろな状況に対応できるようになった。その経験があるからこそ、今、若手と一緒に過ごす時間を大切にしている。

 「今の自分の役割はプレーだけではない。このチームは若い選手が多い。自分が教えたり、なにかプレーをする上でのヒントを与えることができればと思っている。それに今の自分が選手の誰よりも監督と年が近いからね」。そう言ってプロ通算250本塁打まであと4本にせまる大ベテランは笑った。

 5月14日の東北楽天戦(QVC)。延長十回、4時間57分にも及んだ激戦にケリをつけたのは大ベテランのバットだった。途中出場ながら集中力を高め、バットを研ぎ澄ませての絶好機で決めた。井口の放った打球がレフト前に抜けると、ベンチから選手たちが飛び出した。41歳のヒーローに、一回り以上、年の離れた後輩たちが水をかけ、祝福をした。その中心で背番号「6」は笑顔を見せた。若手を中心に躍動をしている2016年のヤングマリーンズにおいて、この男の存在は大きい。メジャーで世界一も経験した実績の中で自身が学んだものを惜しむことなく後輩たちに託している。このメンバーでもう一度、優勝を味わいたい。強いチームになってほしい。強い思いと願いがそこにはある。井口という大ベテランがいる。だから、マリーンズは強い。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

最終更新:5月17日(火)11時54分

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