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【コラム】ストレイテナーが変わった! 新作『COLD DISC』は誰もが共有できる「みんなの音楽」だ

RO69(アールオーロック) 5月17日(火)20時20分配信

ロックバンドのシンガーソングライターがメロディメイキングに懸ける探究心には無数の目標ないしは着地点があるとは思うが、聴き手の目線から見れば「歌い手自身にしか歌えない/表現できないメロディ」と「歌うことで誰でも共有できるメロディ」のふたつに分けられるだろう。

それは単純に「メロディがシンプルか複雑か」という問題ではない。符割りや音程の起伏が少なくても、それが作り手=歌い手自身の声/歌い回し/キャラクターと不可分のものであれば、聴き手がいくら声を嗄らして熱唱しようと、楽曲そのものを聴いた時の感情や高揚感にはなかなか迫ることができないので、何度も音源をリピートして聴きたくなる。逆に、アップダウンが激しく歌うのも困難なくらいのメロディのはずなのに、ふと思い出して口ずさむだけで楽曲に触れた時の感情が抑え難くあふれ出してくる楽曲もあるし、それはそれでまた音源を聴きたくなってしまう。どちらが良質か否かという問題ではない。あくまで作り手自身の自我とメロディの距離感、音楽が「みんなのもの」として共有されることへの意識の問題ということだ。

前置きが長くなったが、上記の比較で言えばストレイテナーは一貫して前者のバンドだったし、それこそ“ROCKSTEADY”“REMINDER”の頃から“羊の群れは丘を登る”“From Noon Till Dawn”など最近の楽曲に至るまで、テナー唯一無二のメロディはそのまま、ホリエアツシというシンガーのアイデンティティと表裏一体のものとして存在してきた。そして、何物にも屈せず譲らず己を貫き通すマインドが、ストレイテナーというバンドそのもののカラーを決定づけてきた。しかし――5月18日リリースの最新アルバム『COLD DISC』は、その様相がこれまでとは大きく異なる。

“NO ~命の跡に咲いた花~”のような穏やかでメロディアスな楽曲はもちろん、初期の蒼きセンチメントを漂わせるロックマーチ的ナンバー“DAY TO DAY”の旋律も、レディオヘッドあたりにも通じるメランコリアに満ちた“Goodnight,Liar Bird”も、どこから聴いてもホリエ節なテナーの楽曲でありながら、聴いた瞬間に誰もが「僕らのもの」として共有可能なアクセシビリティも備えている。そんな変化を、ホリエ自身『ROCKIN'ON JAPAN』6月号のインタビューで以下のように語っていたのが印象的だった。

「歌を作っている段階で自分が歌わなくてもいい曲っていうのを意識しているかもしれないですね。自分が歌わなくてもいいんだけど、自分が歌った時に素晴らしいものだっていう。もともとそれは全然なくて。何ならカラオケとかで歌えるものなら歌ってみろよみたいな、絶対にストレイテナーの曲をカラオケのあのサウンドで誰か違う人が歌ってもよくはならないっていうのが自負としてあったんだけど(笑)。歌ってほしいけどあまり良くはならないだろうなっていう。でもこのアルバムの曲はもっと歌われていいなっていうか、いろんな人に歌ってほしい」

前作『Behind The Scene』(2014年)は、ストレイテナーが提示してきた多彩な音楽世界の伏線を全部回収しながらラストシーズンでもクライマックスでもない、「その先」へ向けての充実感を最高の形で凝縮した作品だった。そんな『Behind The Scene』を完成させた後だからこそ可能な、過去最高に開放的で包容力に満ちたメロディと歌が、『COLD DISC』には確かに鳴っている。(高橋智樹)

RO69(アールオーロック)

最終更新:5月17日(火)20時20分

RO69(アールオーロック)