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横浜で人気の花屋さんが、北海道に移住した理由とは?/北海道

Webマガジン コロカル 5月17日(火)18時7分配信

うちへおいでよ! みんなでつくるエコビレッジ vol.19

コロカル・Web連載【うちへおいでよ! みんなでつくるエコビレッジ】とは?
北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。執筆は來嶋路子さん。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。

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■美流渡を訪ねて2か月で移住を決断した理由

4月16日、岩見沢の山間部、美流渡(みると)地区に小さな花屋さんがオープンした。人口が1000人を割り込み店舗の閉鎖も目立つこの地区に、新しいお店ができたのは何年ぶりのことになるのだろう。いま、わたしはこの地区の空き家を利用してゲストハウスをつくろうと考えているので、近くに花屋さんができたことは、とてもうれしいできごとだった。しかもこのお店を開いたのは、横浜から移住してきた大和田誠さん、由紀子さん夫妻だ。わたしも美流渡への移住を計画していることもあって、大和田さんがなぜここで花屋を開いたのか、その経緯を聞いてみたいと思っていた。

開店して2日目にお店を訪ねてみると、大和田さん夫妻は満面の笑顔で迎えてくれた。お店の名前は〈Kangaroo Factory〉。もともとオーストラリアの花が好きだったことからつけた名前だ。ここはショップ兼工房となっており、全国からフラワーアレンジメントの注文を受け発送も行っている。ちょうどわたしの夫の誕生日が近かったことから、ブーケをひとつ頼むと、真っ赤なダリアを中心に、さまざまな種類のグリーンをあしらってくれた。

「本当はもっと地元の花やハーブなどを増やしていきたいと思っているんですよ」と誠さんは言う。由紀子さんも、「地元の花を使って、この地の景色が感じられるようなアレンジにしたい」と語っていた。

もともとKangaroo Factoryという名前は、大和田さん夫妻が横浜で10年間、店舗を構えず注文によるフラワーアレンジメントを制作していたアトリエにつけられていた名前だった。個性的なアレンジが話題となりファンも定着していたが、2014年に新天地となる北海道へ移住した。

きっかけとなったのは、美流渡で十数年のあいだパン屋〈ミルトコッペ〉を営み、リンパ・ドレナージュ・セラピスト(リンパの流れをよくして血行を促進するセラピスト)としても活躍する中川文江さん(連載14回)のすすめによるものだ。中川さんは北海道だけでなく関東にもサロンを開いており、由紀子さんがこのサロンに通ったことから交友が始まったという。

中川さんの誘いを受けてから、大和田さん夫妻の動きは早かった。まず、2014年夏に花の生産が盛んで北海道とも気候が近い、オランダへ視察旅行に出かけ、花との関わりを見つめ直す機会を得た。その後、秋になって実際に美流渡を訪れ、この地にひと目惚れしたという。地元の人々から温かな歓迎を受け、また満点の星空に心奪われ、移住を即決意したそうだ。そしてふたりは、たった2か月で横浜のアトリエを引き払い、北海道へとやってきたのだった。

「ずっと横浜のアトリエで制作を続けていたとしても、きっと充実した暮らしはできていたはずです。けれど、ぼくたちは花を自分たちで育ててそれを売る、そんな花屋になりたいと思っていたんですね」と誠さんは語る。オランダを旅行中に、自分たちの理想としていた自家栽培をする花屋さんと出会い、「やってみたらいい」と勇気づけられたことも大きかった。また、誠さんは当時47歳。50歳になる前に新しいことを始めたいという気持ちもあり、「さまざまなタイミングが重なって」、移住するならいましかないという思いに駆られたという。


■一歩ずつ着実に夢へ向かって歩みを進める

実際に移住してから、もうひとつ不思議なタイミングが重なった。美流渡の住まいは手狭であったことから、どこかにショップ兼工房を開きたいと考えていたころ、〈ミルトコッペ〉の中川さん一家が、近隣の大きなログハウスへと移り住み、その1階が借りられることになったのだ。

そして、大和田さんは、自身の住まいとログハウスの建つ敷地で花の栽培を始めている。移住してからショップのオープンまでには1年半かかったが、夢へ向かって着実に歩みを進めているのだった。「時間がかかってもいいと思っています。都会とは違う静かなこの場所で、ひたむきにゆっくりと進んでいきたい」(由紀子さん)。

わたしが頼んだブーケができあがったとき、「本当はもっとたくさんの花を入れたいと思っているんですよ。もし、自分で花をつくれるようになったらサービスできるのにね」と由紀子さんは微笑んだ。

都会でこのブーケを買ったら何千円もするだろうと思うほど、たくさんの草花を入れてくれたのにもかかわらず、そんな話をする由紀子さん。横浜にいた頃は、大量に花を仕入れたくさんのアレンジメントをつくってきたが、こうした経営をまわすために数だけをこなすような仕事の仕方に疑問を抱くこともあったそうだ。自分で花を育て、アレンジをして、納得のいくかたちでみんなに届けたい。そんな大和田さん夫妻の想いからは、日々誠実に花や人と向き合いたいという信念のようなものが感じられた。

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最終更新:5月17日(火)18時7分

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