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“快楽“と“楽しさ“で人々を中毒にする井上涼が語るアーティスト論

SENSORS 5月18日(水)13時30分配信

“作品は自分の切り売りで、自分の人生で感じたことを作品という形に切り取っている“と人生を賭けて作品を作るアーティスト井上涼。彼が制作時に大事にしていること、アーティストはどのように社会に貢献するのか?インタビューした。

優良な子供向けテレビ番組を評価する欧州団体PRIX JEUNESSE(プリジュネス)のファイナリストとして選出された子供向け美術番組『びじゅチューン!』、その作詞・作曲・アニメ・歌のすべてを手掛けるアーティスト井上涼氏。彼の作品の特徴はエスプリとキャッチーさ、そして気持ち良い中毒性をもつところにあるだろう。サラリーマンを経てアーティストになった井上涼氏にアーティストとして大切にしていること、社会との交わり方について語ってもらった。


--井上涼さんの作品には中毒性があると考えています。作品を作る時に大切にしていることは何なのでしょうか?

井上: 「快感」とか「楽しさ」を大切に作品を作っています。音にどんな映像が合わさったら気持ち良いか? 言葉にどういう音が乗ったら楽しいか?を大切に作品作りをしています。その快楽追求を作品に表すように努力しているので、人によっては中毒になるのかもしれないですね。

--どのように作品を作ってらっしゃるのでしょうか?制作プロセスを教えてください。

井上: 私の作る作品は歌、映像、歌詞すべてを組み合わせたものとなりますが、制作プロセスの最初には歌詞を作ります。まず歌詞を文字として書きおこし、テキストとにらめっこします。 制作ノート上のテキストとにらめっこして、どの部分が面白いか?どの言葉で遊べるか?韻を踏めるのはどこなのか?を考えて組み合わせていくのですが、「あ、この歌詞面白いなー」というのが出来るとそこがサビになり、言葉が歌詞に変化し、そこから曲が生まれてきます。例えば「風神雷神図屏風デート」などは言葉の組み合わせの中で面白いなーと生まれてきたものです。

歌詞ができると曲作りになるのですが、作品作りにおいては「キャッチーであること」を大事にしているので、J-POPのサウンドを参考にすることが多いです。Aメロで始まってBメロのサビの前で大きい事を言う!みたいなJ-POPメソッドを使って曲作りしています。

完成に向けて、ですが、私は歩くのが好きなので作った曲をiPhoneに入れてループ再生しながら歩いて作品チェックしています。歩きながら何度も何度も聞いていると「あ、ここはこうしよう」とキャッチーにするために必要な要素が思い浮かびます。どのフレーズに何を入れると気持ちよいか?どのパートを強調すると楽しくなるか?といいうのがiPhoneで歩きながら作品を聞いているとひらめきます。

--井上さんは最初からアーティストとしてデビューされたのではなく、会社勤めされていたとお聞きしています。会社勤めとアーティスト活動の両立はどうでしたか?

井上: 広告代理店で7-8年アートディレクターをしていました。美大を出て「デザインの仕事をするぞ!」と思って会社に入ったのですが、自分が作りたい作品が作れないジレンマを感じていました。「広告デザイン」なので必ずしも自分が作りたい作品が作れるわけではない、と今では理解できるのですが、当時は自分の作品を作れないことと、人付き合いの大変さでマチルダ的心境*が溜まっていきました。
(*筆者注:『マチルダ先輩』は井上涼氏が社会人活動をしながら手がけていたアート作品。会社勤めのOLの心境を歌と映像で表しプロジェクションマッピングをするもので筆者が2013年に井上涼氏に出会ったキッカケの作品。)

井上: 「これは会社の仕事以外に個人の作品を作らなければやっていられないぞ」という心境になった時にアーティスト活動を始めました。なので私にとっては仕事とアーティスト活動はどちらも大切な両輪でした。夜中2時に仕事終わってそこからアーティスト活動始めて朝6時まで作品を作り、その後家に帰ってお風呂に入るような生活していました。 そして二年前に会社をやめてアーティスト活動一本化して現在に至ります。

--会社勤めしながらアーティスト活動をしている方に向けて先輩アーティストとしてアドバイスをお願いします。

井上: ケースバイケースですからね。私の進んで来た道が正解というわけではないので、ありふれた言葉しか言えないですが・・・。大切なのは『目の前に与えられたチャンスを全力でやりきる』という気持ちが大事なのかもしれないですね。

アーティストになるキッカケはSENSORSでも取材されていた川村真司さんがディレクションする『テクネ 映像の教室』に出演したというのもありますが、 もともと社会人やりつつ自分の作品を作っていましたし、 友人がグループ展をする際には参加して、作品を出していことは精一杯やっておりました。 私としては『アーティストになってやるぜ!』という野心よりも、「社会人やりながらアーティスト活動したい、これからどうしようどうしようどうしよう」と悩みながらいた時に『テクネ』やその後に続く『びじゅチューン!』に出会ったことがキッカケとなりましたが、作品を出し続けていたのが大事だったのかな?といまから振り返るといえますね。

--アーティストという職業についてどう思います?

井上: 自分に一番向いていると思っています。
アーティストにも色々幅ありますけどね。例えば村上隆さんのようにアート市場の中心で高額な作品を売買!みたいな方もいるし、ミュージシャンもアーティストって言うし。なのでアーティストという言葉の中にも幅があるとは思っていますが、自分に一番ぴったりしていると思い昨年やっと「自分は『アーティスト』として生きていく」と、覚悟を決めたのです。

実はいままでアーティストって言いたくなくて、冗談まじりでハイパーメディアクリエイターって言っていた時期もあるのですがあるプロデューサーに止められまして。音楽も作ってるから「映像作家」だと違和感があるし、かといって「ミュージシャン」でもない...。結局うまく自分を包み込める言葉が『アーティスト』しかなかったのです。

--『アーティスト』はどのような形で社会に貢献していると思いますか?

井上: 自分を削り取って人の豊かさにつなげている職業だと思っています。作品は自分の切り売りで、自分の人生で感じたことを作品という形に切り取っています。それを受け取る皆さんが見ても気持ち良かったり楽しいと思えると嬉しいなぁ、と思って作品を自分から切り取っているのです。 アーティストによっては絶望を直球で描くことにより価値を提供する人もいますが、私の場合、私の人生から出てきたものが「楽しくて、かわいい」という印象を持ってもらえるように努力しているので、お仕事に成り得ているのかな?と思っています。

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最終更新:5月18日(水)13時30分

SENSORS