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債務超過で「二部落ち」の企業は何社ある? 一部に返り咲いたのはあの会社だけ

ZUU online 5月19日(木)7時10分配信

経営再建中のシャープ <6753> が2016年8月1日付で二部に指定替えとなり、一部上場60年の歴史が終わる。4月に台湾の鴻海(ホンハイ)グループ傘下入りを明らかにして40日後、16年3月期の連結決算で債務超過に陥った。これが東証の一部指定基準に抵触してしまったのだ。シャープのように、債務超過を理由に東証1部から2部に降格された例は過去10数年間で何社あるのだろうか。

■自ら開いた“自滅への道”

最終損失は2年連続で2000億円を超す大幅赤字となったが、実はリーマン・ショックが起きた09年3月期以降の8年間で最終黒字になったのはわずか3年だけだ。黒字の合計額が354億円であるのに対し、残り5年間の累計赤字額は1.5兆円に及ぶ。かつて1兆円以上あった純資産が枯渇するのも無理はない。

一番の大きな要因は同社の液晶事業の損失によるものだ。99年1月に高らかに「クリスタルクリア カンパニー宣言」を行い、同事業を中心とする独自技術で「オンリーワン企業」を目指すとした。その後、世界最大となる大阪府堺市の液晶工場建設に約3800億円を投じたが、これが稼働したのは折悪しくもリーマン・ショックで世界需要が大きく落ち込んでいる最中だった。今振り返るとこれがシャープの致命傷になった。

韓国や国内の同業の攻勢で液晶テレビ、スマートフォンの製品やパネルの市場シェアがじり貧となるなか、同社は高画質・低消費電力などの「ハイエンド」パネルに注力し、市場を自ら狭めてきた。これが多くのハイテク日本企業と同じ自滅への道となった。

■経営再建は迷走の一途 液晶事業への巨額投資が命取りに

同社最大の損失を計上した12年度には、希望退職募集や従業員報酬の減額、リストラを実行する一方、外部との資本提携を模索し、インテルやマイクロソフトなど有力企業の名前が浮かんでは消えた。一度は正式決定したホンハイの資本参加も白紙撤回された。その後、主力取引銀行の支援を受け、当時はまだ小さなスマホメーカーであった小米(シャオミ)などの中国顧客を獲得、一時持ち直すが、すぐまた苦境に追い込まれる。

直近2期の大幅赤字は液晶パネルの納入シェア低下と、主力顧客アップルのiPhoneの販売鈍化が主因だ。自主再建を断念した同社は今年初め、いったんは官民ファンドの産業革新機構に傾いたものの、最終的には巨額の資金支援を提案したホンハイの傘下に入る決断を余儀なくされた。

シャープのように、債務超過を理由に東証1部から2部に降格された例は過去10数年間でわずか11社。このうち8社はサブプライム問題とリーマン・ショックで世界経済が混乱した07年と09年に集中したが、その後の道のりは総じて厳しい。

■一部返り咲きは蟻地獄から這い上がるが如く

一部に返り咲いたのは信販大手のオリエントコーポレーション <8585> のみ。07年に2部に転落したのち、みずほ銀行などの支援で債務超過を解消し、11年に復帰した。今も2部に残るのはチューナー製造のピクセラ <6731> と富士通傘下の電池メーカーFDK <6955> だ。残り8社は市場で一時脚光を浴びた島田理化工業を含め全てが上場廃止となっている。

シャープの先行きも楽観はできない。ホンハイが今年6月下旬をめどに出資することで債務超過は解消されるが、それで損益が即座に急改善するとは考えにくい。これまで高成長を続けた世界のスマートフォン出荷額は当面マイナス成長が続きそうで、ホンハイ自身も厳しい時期を迎える。

ホンハイの郭台銘(かく たいめい)会長は、今回の出資は買収でなく投資だ、と強調する。シャープの自主性を尊重するとの意味だろうが、投資である以上は収益成長を求める、とも聞こえる。シャープの前期の営業損益は一時費用を除く実質でも401億円の赤字。黒字を稼いだ複写機などのビジネス・ソリューションと、ほぼ収支トントンの電子デバイスを除く3つのセグメントは全て赤字で、成長見込みも乏しい。ホンハイとの間で、「事業分離はしない」「40歳以下の社員の雇用は守る」などの約束はあるようだが、確実に守られる保障はない。

■「約束が違う!」は後の祭り

というのも、買収決定からの1カ月余りで、もはや退路のないシャープが次々と譲歩を迫られた事実があるからだ。当初7000億円と提案された出資額は、その後、偶発債務の存在や業績悪化が明らかになったことで、結局3888億円とほぼ半分に値切られた。現状維持としていた経営体制についても、ホンハイ側が6名、シャープ側は3名の取締役を選び、新社長はホンハイの戴正呉(たい せいご)副総裁の就任が決まり、議決権の2/3を握るホンハイの意向に従わざるを得なかった。

「沈む船からネズミが逃げる」のたとえのごとく、大幅減俸と先行き不安で人材流出は既に始まっている。3月末の連結従業員数は4.4万名弱で4年前のピークから3割近く減った。例えば日本電産はシャープの部長クラスの人材を既に100人規模で採用、4月には前副社長のスカウトを発表している。

「シャープ・ペンシル」の発明を皮切りに、液晶を応用したビデオカメラ「液晶ビューカム」やペン入力のモバイル端末「ザウルス」などに加え、空気清浄機「プラズマクラスター」など数々の独自ヒット商品を生み出してきたシャープ。今後、台湾企業の元でどう変わっていくのか見守りたい。(シニアアナリスト 上杉光)

最終更新:5月19日(木)10時32分

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