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社説[1億総活躍プラン]具体的道筋が見通せぬ

沖縄タイムス 5月19日(木)5時0分配信

 政府は18日、首相官邸で1億総活躍国民会議(議長・安倍晋三首相)を開き、2025年度までの政策を盛り込んだ中長期計画「1億総活躍プラン」をまとめた。安倍首相が掲げる「1億総活躍社会」を実現するための工程表である。
 柱は三つ。「名目国内総生産(GDP)600兆円」は、21年度に達成することを目指す。「希望出生率1・8」と「介護離職ゼロ」の目標時期は、25年度に置いている。
 工程表通りに実現するか不透明と言わざるを得ないが、参院選をにらみ、保育士や介護職など社会保障分野を重視しているのが特徴だ。
 現場の人手不足が深刻な保育については来年度から保育士の月給を約6千円引き上げる。経験を積んだ職員は月4万円程度上がるよう改善する。保育士の月給を約6千円引き上げることで人手不足が解消するかどうか疑問だ。
 同じく人手が厳しい介護職員も月平均で1万円上げる。介護職の月収は全産業平均より10万円も低い。1万円アップしたところで、人材が集まり、人手不足が解決するとはとても思えない。
 プランで保育や介護の待遇を改善する方向性が示されたことは歓迎する。問題は内容が十分であるかどうかだ。
 プランを詳細に見ると、気になる点が浮かび上がってくる。保育士について「技能・経験を積んだ職員については、全産業の女性労働者と比べ4万円程度ある賃金差がなくなるよう」処遇するという。
 なぜ「女性労働者」なのだろうか。女性の賃金は男性の7割と賃金格差が厳然とある中で、女性を比較の対象としては「女性が輝く社会の実現」にはならないだろう。
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 非正規労働者は労働者の4割に拡大している。プランでは非正規労働者の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」を導入するため、労働関連3法を18年度までに改正し、どのような場合に賃金の差をつけることが不適切かを示すガイドラインを策定する。
 同一労働同一賃金についても、「我が国の雇用慣行には十分留意しつつ」と留保が付いているのが気になる。
 日本型雇用は、年功序列の賃金体系などを残している。非正規労働者が納得できるような格差是正につながるだろうか。非正規労働者の待遇を底上げするためには企業の理解も必要だ。
 返済が不要な学生向けの給付型奨学金が先送りされたのは残念だ。大学生の2人に1人が奨学金を受けている。日本には国費を充てた奨学金がないため、数百万円の負債を抱えて卒業し、その後の生活に返済が重くのしかかっている。「学生ローン」と呼ぶ方が実情を反映している。
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 プランの最大の問題は、裏付けとなる財源が示されておらず、実現できるのか道筋が見えないことである。
 政府は31日の閣議でプランを閣議決定し、自公は夏の参院選の公約に据える考えだ。自公が本気で参院選の目玉政策にしたいのであれば、財源などの根本問題に真(しん)摯(し)に答えるべきだ。そうでなければ、参院選に向けたアドバルーンというほかない。

最終更新:5月19日(木)5時0分

沖縄タイムス