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「男社会」総合格闘技の固定観念を壊す女性たち

AFPBB News 5月19日(木)15時23分配信

(c)AFPBB News

【5月19日 AFP】キックやジャブを放つたびに光る額の汗。――ブルック・カールッチ(Brooke Carlucci)さんをはじめとする総合格闘技(MMA)スクールの生徒は、男性社会と考えられてきたスポーツの概念を取り払おうとしている。

 真剣なまなざしでガードを上げたカールッチさんは、目の前のサンドバッグに拳をぶつける。大学でジャーナリズムを専攻する20歳のカールッチさんは、護身だけでなく、スタイルを維持したり、うっぷんを晴らしたりするため、趣味のような形でMMAのトレーニングを始めた。

 米ロサンゼルス(Los Angeles)南部ラ・ミラダ(La Mirada)のジムで取材に応じたカールッチさんは、「男だけのものだと思っている人もいるけど、それは違う。女性だって同じようにできます」とすると、「強くなって、楽しみながら成長できる」とMMAの楽しみを語った。

「格闘技が暴力的で、血なまぐさく、気持ち悪いという固定観念は確実に存在する。テレビではそう見えるかもしれないけど、女の子にもできる。それも、暴力的になる必要はないのです」

 カールッチさんは、ワークアウトを終えてヘトヘトになりながらも、どこか充実した表情で拳に巻いたバンデージをさすった。

 MMAの世界では、柔道やレスリング、ボクシング、キックボクシング、空手、そして他のスタイルを織り交ぜながら、何でもありの格闘ショーを、長年にわたって男性がけん引してきた。リング上では、どれだけ手数を出せるかが勝負になってくる。

 米国では、1993年に「UFC(Ultimate Fighting Championship)」の第1回大会が開催されてから、大金が飛び交う総合格闘技人気が過熱した。

■きっかけはロンダ・ラウジー

 MMAで女性が注目されるようになったのは、8年前に北京五輪の柔道女子70キロ級で銅メダルを獲得したロンダ・ラウジー(Ronda Rousey、米国)が、総合の道へ転向することを決めてからだ。

 現在29歳のラウジーは、世界一有名な女性格闘家の地位に君臨。また、世界で8番目に収入が高い女性アスリートで、年収は広告収入350万ドル(約3億8000万円)などを含めると、650万ドル(約7億円)に上る。

 リング上での圧倒的な存在感、その知名度を存分に生かした戦略、ビジネスパーソンとしての直観力、そしてその美貌(びぼう)が、ロンダを世界的に影響力のあるアスリートに押し上げた。

 近年では「ロンダ・ラウジー効果」で、MMAに挑戦する女性も増えている。

「(ラウジーは)間違いなく、少女や女性たちがMMAに興味を持つきっかけになった人物」というのは、MMAを長年取材してきたジョシュ・グロス(Josh Gross)さんだ。

「ロンダがMMAの女性人気を高めたのは疑いようもない事実で、暴力的で無謀、残忍という見方も変わっています」

 ラウジーは、女性がMMAへの挑戦を躊躇(ちゅうちょ)するべきではないと考えており、グロスさんも「(レッスンを受けている)彼女たちは、自分があんな場所に来るとは思いもしなかったでしょう。ロンダは彼女たちのヒーローですね」と話している。

■強さと誇り

 10年近くロサンゼルス周辺のジムでMMAを指導するジュヌビエーブ・ソシンスキー(Genevieve Soszynski)さんも、格闘技に興味を持つ女性の増加を実感している。

 ソシンスキーさんは日々、戦う力を身につけ、自分が強くなったという実感を求める生徒の姿を見ているという。

「格闘技への抵抗がなくなり、新たなスキルを身につけて、自信を持っていく女性の姿を見るのはうれしいです」

「中には接触を恐れる人もいますが、慣れていくうちに、最初のおびえはなくなっていきます」

 生徒の一人であるアブリー・マーティン(Abrey Martin)さんは、トレーニングと成長のために全身全霊を注いでいる。

 サンドバッグに当たるパンチとキックの一つ一つが、彼女の決意を物語っているようだ。完璧な一撃を求める彼女からは、アドレナリンがあふれている。

「強くなったと感じながら、それを誇りに思えるものをずっと探していたんです」

 彼女たちは、体から「女性らしい」とされてきたラインが消えていくことにも、まったく抵抗はないようだ。

 カールッチさんは言う。

「女性が筋肉もりもりになって、理想的とされてきた『極細ボディー』がなくなったら、なんだか格好いい。最高だし、セクシーだと思います」

 映像はカリフォルニア(California)州コスタメサ(Costa Mesa)で7日に行われたMMAの試合や、ラ・ミラダのジムでのトレーニング風景。4月30日撮影。(c)AFPBB News

最終更新:5月19日(木)15時23分

AFPBB News

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。