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可愛すぎるアニメ『ムーム』でピクサーと日本のアニメ制作技術が結集

dmenu映画 5月20日(金)9時30分配信

2016年、国際映画祭で次々と賞を獲得している3D短編アニメーションがある。『世界から猫が消えたなら』の原作者・川村元気がストーリーを書いた絵本を元に、ピクサーでアートディレクターを務めていた堤大介とロバート・コンドウのふたりが監督した『ムーム』だ。

捨てられてしまったものに残る思い出を取り出しては空に返す仕事をしながら、湖のほとりで暮らすムームが、泣いてばかりいるルミンと出会い、喜びと、それと同じだけの悲しみを知る物語が、光と影を生かした美しい色彩で描かれる。 赤い消防ハットをかぶったムームをはじめ、登場するキャラクターたちのしぐさ、湖から引き上げられるガラクタの数々にいたるまで、全てが愛らしい。原作が絵本であるので子ども向けと思われるかもしれないが、根底にある「本当に悲しいことは本当に幸せなことに似ている」というテーマは普遍的で、むしろ大人の心にグッとくる。大人も子ども楽しめる、心にしみるアニメーションだ。

4月末に銀座のギャラリーで行われたトークイベントで原作者でありプロデューサーのひとりでもある川村は、「たとえば財布とか手帳とか、使わなくなった途端に急にくたびれてしまったように見えますよね。使っていた人から切り離されて、つながりを断たれた途端、物に精気が無くなって見えるのは何故だろうとずっと気になっていました」と語っていた。“ムーム”は、そんな物と人との思い出が生き物のようにキャラクターとなったら、という発想から生まれたのだそう。

監督の堤大介とロバート・コンドウは、2014年、ショート・アニメーション『ダム・キーパー』を発表した。印象派の絵画のように美しいこのアニメーションは高く評価され、2015年アカデミー賞の短編アニメーション部門にノミネートされた。『ダム・キーパー』は全編手描きのアニメーションであったが、本作『ムーム』は、ふたりが所属していたピクサーでの手法を存分に活かしながら制作された、フルCGアニメーションになっている。

3DCGアニメーションそのものの制作については、作画監督、キャラクターモデルや背景作成、アニメーターにいたるまで、全て日本サイドで日本人スタッフが担当した。プロデューサーの石井朋彦は今回のプロジェクトで、日本の高いアニメーション技術とピクサー&ディズニーのノウハウをコラボレートし、インターナショナルに通用する作品をつくるということを目指していたようだ。その結果は、映画祭での数々の受賞で証明されつつある。

実際の作画を開始する前には、絵コンテに音も入れて編集されたビデオコンテが作られ、それは何度も変更・修正が重ねられた。監督、プロデューサー、クリエイター、それぞれの思いをきちんと言語化しながら練りあげられていったようだ。プリプロダクションと呼ばれる過程にたっぷりと時間をかけるこの制作スタイルは、絵コンテが出来上がるとすぐに作画に入らざるをえない日本のアニメーション作りとは大きく異なるらしい。

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最終更新:5月20日(金)9時30分

dmenu映画