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コメはまだ主食なのだろうか?

ニュースソクラ 5月20日(金)12時10分配信

エサ米振興で米価底入れ、関連予算3000億円

 コメはまだ主食なのか。最近、そんな疑問が頭をよぎる。半世紀前から続く国民のコメ離れで、もう食卓の主役というには影が薄い。だが、農水省や農協はいまだ「コメ本位制」で米価維持に懸命だ。「ひいきの引き倒し」というが、それがかえって農業の危機を深めているように思える。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)も控え、コメの新しい「居どころ」を探る時期ではないか。

 農協が卸に売るコメの価格(全銘柄加重平均)は乱高下を重ねながら、全体として下落傾向にある。20年前にさかのぼれば2万円を超えていたものが、今は1万3000円台という凋落ぶりである。

 短期の変動要因は作柄や東日本大震災に伴う流通混乱などさまざまだが、長期低迷の背景は消費の減退だ。国民1人当たり消費量は62年の118キログラムをピークに減少の一途をたどり、14年には55・2キログラムと半減。2人以上世帯の家計消費でもパンに逆転された(15年でパンが月額2499円、コメが1822円)。14年の生産額も1兆4343億円と野菜の2兆円、畜産物の3兆円を下回る。人口減少時代に入り市場縮小は更に加速するだろう。

 需給ギャップを埋めるため60年代末から続くのが「減反」だ。コメの代わりに麦や大豆などを作付ければ補助金が出る。従わなければ更に減反の割り当てが増え、補助金や融資で冷遇されるペナルティーもあった。秋田県大潟村のように減反への対応を巡って激しい地域対立が生じた例もある。

 農家が減反に反発した一因は水田で他の作物を作る難しさだ。そこで09年に始まったのがエサ米(家畜の飼料用米)助成。08年ごろの国際的な穀物価格高騰でエサ代が高くなったのも背景だった。当時、自民党農林族議員は「今後は『減反』じゃない。水田フル活用だ」と強調した。エサ米10アールに8万円と「単価」を決めたのは民主党政権だが、現在は収量に応じ5・5万~10・5万円が出る仕組みになっている。

 米価が15年に持ち直したのも農水省と農協がエサ米増産の旗を振ったからだ。生産量は前年の2・3倍の42万トンに達し、それだけ主食用米の需給が締まった。政府は10年後に110万トンに増やすと意気込む。

 しかし、これは持続可能性のある政策だろうか。財務省の試算では、エサ米による農家収入の9割は補助金。関連予算は3000億円以上に達し、財政制度審議会も削減を勧告する。

 また、最近は米価とコメ消費量の逆相関(価格が上がれば需要が減る関係)が強まっている。12年の米価上昇局面で外食・中食の業者は商品価格を据え置いたままコメの使用量を減らしたが、米価が下がってもその量は元に戻らなかった。米価引き上げは消費減退に拍車をかけ「自分の首を絞める」結果になっているのだ。

 農政関係者は「コメを守ることは水田を守ること。食料安全保障や多面的機能(水害防止や生態系・景観の保全)の観点からも必要」と言う。だが、米価維持はその手段として適切か。どうせエサを作るならトウモロコシなど他の飼料用作物を水田に植えるとか、家畜を放牧して荒廃を防ぐ選択肢もある。

 欧州は90年代に価格支持を放棄し、農産物価格を市場に委ねた上で農家の所得を補てんする政策に転換した。民主党政権が導入した「農業者戸別所得補償」は制度設計に問題があったとは言えその政策思想を取り入れたものだったが、政権崩壊で「あだ花」に終わった。

 18年度にはいわゆる減反廃止(国によるコメ生産枠の割り当てをやめる)が待っている。そのころにはTPPが発効し、8万トン近いコメが米国や豪州から新たに入ってくるかも知れない。それでも農水省と農協はエサ米増産で乗り切ろうとするのだろうか。生産現場も巻き込んだ根源的な議論が必要だ。

綿本 裕樹 (農業ジャーナリスト)

最終更新:5月20日(金)12時10分

ニュースソクラ

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