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カンヌの観客の恐ろしさを知る女優・樹木希林の対処法

dmenu映画 5月20日(金)12時10分配信

是枝裕和は、カンヌ映画祭が新作を待ち望む日本人監督の1人だ。『そして父になる』(13)『海街diary』(15)に続き、カンヌ初の阿部寛、『そして父になる』に続いて2度目の真木よう子、昨年『海街diary』『あん』と2作品の舞台に立った樹木希林らキャストとともに、『海よりもまだ深く』で今年もカンヌに戻ってきた。

カンヌには是枝ファンが多い。
上映前、監督とキャストが呼び出されて登壇しただけで、会場のドビュッシー劇場は盛り上がりを見せた。タキシードにブラックのシャツとタイを合わせた是枝監督、タキシード姿の阿部寛、アルマーニのドレス姿の真木よう子、そして裾に海原を飛ぶ丹頂鶴の柄が鮮やかな黒留袖の樹木希林が並ぶとブラ~ヴォの歓声が一層大きくなった。

「温かい拍手、光栄です。皆さん、ありがとうごさいます。20年近く僕が住んだ場所“ふるさと”を舞台にした特別な作品です。皆さんにとっても特別な作品になったら嬉しいです」と監督。初カンヌの阿部は緊張気味に、2度目の真木はいつもの調子でクールにカンヌの舞台に立つことの喜びを語った。しかし、さすがは百戦錬磨の大ベテランの樹木希林。上映前は持ち上げても、映画の出来いかんではどん底まで叩き落とすカンヌの観客の恐ろしさを知っている。

「樹木希林です。今はゆったりとした顔をしておりますが、すぐに逃げ出せる用意をしております」と着物の袖をからげて見せた。足元を見ると黒いアンクル・ブーツ。いつでも走って逃げ出せる構えである。観客がどっと沸く。

しかし樹木希林の危惧は映画の最初のシークエンスで雲散霧消。冒頭の樹木希林と小林聡美の親子の掛け合いにどっと笑いが起き、観客が物語に引き込まれていくのが伝わってきた。

「マーケット試写でも“笑ってた? 笑ってた?”と聞いたんですが、今回はそこ(笑ってくれているかどうか)が気になるんです。公式上映で観客が細かいところまでよく拾って笑ってくれていたので嬉しかったですね。泣かれるよりも嬉しい(笑)」と監督。「笑うってことは身近な存在だと思ってくれているということだと思うんですよ。まぁ、言葉はあまり良くないかもしれないけど“してやったり”という感じ、うーん、なんて言うかな……」と言いよどむ是枝監督に樹木希林が、「監督なら、んん~、もうちょっとなんかいい言い方で~」とダメ出し。親子漫才というものがあるならば、こんな感じなのではないか。

「今回は、海外でこれは通用するかなとか全く考えずに作りました。大丈夫だったみたいですね。“あれは一体なんだ?”というような質問はありませんでしたし、僕が心がけている“狭く深く描けばどの国の人にも届く”ということを確信しました。

僕は郷土愛とかあまりないんですが、それでも19年間育った場所がスクリーンに映り、カンヌの皆さんにも見てもらえたことに感慨はありました」と監督。

長身の阿部に樹木希林が言う。「団地よりカンヌが似合うよね」。阿部もやっと緊張が解けてきたのか笑顔を見せ、「ここカンヌでお客さんと一緒に見て、笑ってもらえ、受け入れてもらったなあって感じですね」と言えば、すかさず樹木希林が「これから変わるよね!」と突っ込む。おもわず「はいっ」と答える阿部。監督が脚本に活かした、台を使わずに天袋がのぞけるその長身が、微笑みほころんだ。カンヌ映画祭は、『海よりもまだ深く』を、優しく、温かく、笑顔で迎えた。

(C) Pascal Le Segretain/2016 Getty Images

文=まつかわゆま

最終更新:5月20日(金)12時10分

dmenu映画

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。