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バフェット氏の「心変わり」 アップル株取得が象徴する変質

ZUU online 5月22日(日)9時10分配信

米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは5月16日、アップル銘柄981万株を10億7000万ドルで取得していたことを明らかにした。これにより、バークシャー・ハザウェイのハイテクセクターへのエクスポージャーが格段に高まった。

バフェット氏はIBMを除き、「よくわからない」ハイテク株への投資を避け、堅実なビジネスを展開する優良株を長期保有する主義であることは有名で、「なぜ心変わりをしたのか」と、各種の憶測を呼ぶこととなった。

人気金融投資サイト『シーキング・アルファ』は、「オマハの賢人と崇められるバフェット氏は、ついに耄碌(もうろく)したのか、それとも高リターンを叩き出してきた手法の『バフェット方式』は健在なのか」と問うた。

だが実は、今回のアップル株の取得は、「バフェット後」をにらんで、ここ数年のバークシャー・ハザウェイで進行していた緩やかなペースの変革に照らせば、驚くべきことではない。いや、バフェット氏その人にも、投資理念の変化が少しずつではあるが、見られるのである。

■崩れるハイテク株回避の方針

バフェット氏は3年前の2013年、「すぐには、アップル株を買わない」という趣旨の発言している。「長期的にどのハイテク株が勝つか、見極めがつきにくい」というの理由であった。だが、「絶対にアップル株を買わない」と言ったのではなく、「今すぐには決められない」と言ったのである。

事実、5年前の2011年にはIBM株に大型投資を始めており、すでに「ハイテク株回避ルール」は、有名無実化されていた。バフェット氏はアップル株取得に続き、米ヤフーのインターネット関連事業の売却入札にも間接出資する方針を表明している。

バークシャー・ハサウェイの本拠地である米ネブラスカ州オマハで4月30日に株主総会が行われた際、質問を受けたバフェット氏は、ハイテク企業の勝者である米アマゾンの最高経営責任者(CEO)であるジェフ・ベゾス氏への深い尊敬の念を隠さなかった。バフェット氏は、「インターネットがビジネスのみならず、社会全体にとって極めて重要だ」と回答した。

バフェット氏は、遅まきながらハイテク株の正統性を認めた格好だ。こうして、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオにおいてIBMやアップルは、アメリカン・エキスプレスやコカ・コーラと同等の地位を得た。したがって、バークシャー・ハザウェイのハイテク投資拡大の流れが将来的に止まることはないだろう。

ここで注意が必要なのは、今回のアップル株取得は、バフェット氏が直接指揮したものではないことだ。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が報じるところによると、アップルへの投資はバフェット氏の参謀で後継者候補であるポートフォリオ・マネジャーで、10億ドル以下の投資権限を与えられているトッド・コームズ氏かテッド・ウェシュラー氏のどちらかによるものだという。この中でも、2011年にバークシャー・ハサウェイのインテル株取得を主導したコームズ氏が決断を下したと見られている。

バークシャー・ハサウェイのハイテク株投資の舵を切っているのは、副官たちであり、バフェット氏がその流れに承認を与えていると専門家はにらんでいる。この「バフェット氏の暗黙の承認」こそが、直近のアップル株上昇の理由だ。まさに、「バフェット・プレミアム」がアップル株についたのだ。『シーキング・アルファ』はいみじくも、こう指摘している。

「もし今回のアップル株投資が、『コームズ氏、アップル株を買う』、あるいは『ウェシュラー氏がアップル株取得』という見出しだったら、投資家たちはアップル株に飛びついただろうか」。

■後戻りできない企業文化の変質

表面的に見れば、今回のバークシャー・ハサウェイによるアップル株の取得は、優良株が下落した時に大量購入し、長期保有する「バフェット方式」に従っているように見える。

一年前に一株当たり価格が132ドルでピークをつけ、現在は30%下げて94ドル近辺で低迷中の今こそが、「チャンス」といえるのかもしれない。事実、低ければ低いほど、会社が稼ぐ利益に対して株価が割安であるとされる株価収益率(PER)で見れば、アップル株はたったの10である。

だが同時に、バークシャー・ハサウェイのアップル株取得後も、アップルの主力製品であるスマートフォンiPhoneの販売台数減少などで、株価低迷は続いている。同社が保有するアップル株の価値は3月末には10億7000万ドルだったが、5月16日終値では約9億2100万ドルにまで落ちている。

カール・アイカーン、デイビッド・アインホーン、レイ・ダリオ、デビッド・テッパーなど著名な投資家率いるファンドが軒並みアップル株の全株売却を発表するなか、バークシャー・ハサウェイは見事な「逆張り」勝負に出ているわけだ。

いずれにせよ、バークシャー・ハサウェイの変質は、後戻りできないレベルだ。今年のバークシャー・ハサウェイの株主総会で、バフェット氏に、「あなたが亡き後、バークシャー・ハサウェイの企業文化は守られるのか」との恒例の質問が飛んだ。それに対し、バフェット氏はこう答えた。

「私が死んだ後も、バークシャー・ハサウェイの企業文化は私の後継者、取締役メンバー、傘下企業の経営者に、何十年にわたり連綿と生き続けるだろう」。

だが、その「企業文化」の意味は、世の中の変化やバフェット氏自身の変化につれて変わっていく。彼が亡くなれば、なおさらだ。アップル株への投資は、その象徴だといえよう。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

最終更新:5月22日(日)9時10分

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