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個人投資家が「株の売却」で陥りやすい落とし穴

ZUU online 5月22日(日)16時10分配信

今回は株を売る時に「間違いやすいポイント」について解説します。ベテラン個人投資家のAさんはある一部上場株を3000株保有していました。セグメントは景気敏感といえる業種です。もう十分利益が出ているので売ろうと思うのですが、会社側の発表では今期(ということは来年の3月末)に増配を予定しています。

■株の売り注文を出したものの、なかなか約定しない

そこでAさんはちょっと欲張りな値段で売り指値を出しました。ところが、注文を出したものの、なかなか約定しないため、目下イライラと日々を過ごしているといいます。

最近、Aさんが見たニュースでは日本のあるトップ企業の社長が業績発表と今後の見通しについて述べていました。それによると「前期は最高益更新を果たせたが、それは為替の影響が大きかった。今期は今までと様相が違っていると認識している」という内容でした。早く約定しないと株価が崩れていまうとAさんは気になり始めています。

さて、みなさんがAさんだったらどうしますか?

■株を売る時に勘違いしやすいポイント

Aさんの考え方は理解できます。買った株が上がった。利益が出ているから売りたい。でも、どうせ売るならさらに高く売りたい。会社側は来年に増配を実施すると言っている。ということは業績がいいわけだから、欲張りな値段でも売れるはず…。Aさんの株の売り注文はこういうロジックで成り立っているわけですね。

しかし、この考え方では希望価格で株を売るのは難しいといえます。せっかくの株の利益を売りそこねて、ふいにしてしまう可能性も大きいのです。

なぜなら、以下の2点を混同して売値を決めているからです。

まず、株を売るという行為を優先させるなら、増配だろうが何だろうが、寄付き成り行きで売るのがベストです。儲かっているからこそ、売ろうという気持ちになった原点に帰れば、売ることが最優先で、売値にこだわることはないはずです。

「売る」きっかけは「今の儲けを確定させたい」という気持ちからだったはずですが、「さらなる高値で売り抜けたい」という欲がでているためにその気持ちがブレているのですね。「もっと儲けたい」と思うあまり、「約定しない間に指値未達で値下がりする可能性」に気がつけずに「高値で指値を出しておく」ことを優先させてしまっています。

仮に約定しない手前で株価が失速した場合、「ああ、あの時、売っていれば」と後悔します。そして、今度は、株価が失速する直前の高値に指値変更しがちです。この時も「その値段だったら、また戻れるだろう」と考えてしまうのです。

しかし、一度株価が崩れてしまうと、よほど運が良くない限りは希望する値段では売れません。行きつく果ては塩漬け株を抱える羽目に。

株を売る場合は「確実に売る」「そうでなければ利益は絵に描いたモチ」という点をわきまえて、「増配なのだから」「いい製品を発表したのだから」といろんな理由を株の売買値段に盛らないことです。

売る側には「いい情報の分、プレミアムがつくはず」と思えますが、買い手には「割高」に感じられることもあるのです。相手がお得に感じない値段では、株は売れないことに気が付くべきです。「お得だ」「割安だ」と感じてくれる人が自分の売り株の引き取り手なのですから、自分がちょっと惜しいな、と思うくらいの値段がちょうど良い売値です。

目一杯の欲張り価格ではよほどの突発的なことがない限り、買い手は現れません。その点を理解して「利益が出たら売る」を優先したいですね。

■覚えておきたい「成り行き」と「指値」の秘訣

「売ろう」と決めたら細かいことは抜きにして「成り行き」で注文。これができると強みになります。売りたくないから指値にこだわり、結局、売れずじまいになり、儲けを逃す…。この悪循環を断ち切るには「成り行き」で必ず約定させることです。

どうしても指値売りする場合でも1000円とか500円とかのジャスト値段は避けましょう。キリのいい値段では売買は成立しにくいものです。

1000円で売りたい場合は996円とか978円などにします。1000円で買おうと思っている人にとって、996円や978円はお買い得価格に感じられるからです。株価もスーパーの値付けと同じです。

相手あっての相場です。買い手の立場で売値を決める。指値にこだわるならそれを意識したいですね。

■株売却をためらわせる「売却後の大暴騰」

売った後、持ち株が大暴騰、という例は投資家なら経験されていると思います。が、それはそれ。悔しい経験は「いい経験」と思って、その経験知をお金で買ったと考え直し次に活かしましょう。

「これは宝だ」「大切にしなければ!」と思える銘柄なら売った直後でも買い直せるはずですが、人の心理とは不思議なもの。自分が売却した株は自分にとって「済んだこと」になり、すっかり忘れてしまいます。その後に人の評価が高まって、見直されていることにはなかなか気がつけずに過ごしがち。気が付いた時には大暴騰というわけです。

そこで、時々は個人投資家、人のお金を預かって運用している機関投資家、それらの持ち株を担保にお金を貸す側……と立場を変えてイメージして、どういう銘柄が評価されるのか、考える訓練をしたいですね。

すると意識している株の銘柄を客観的にみられるようになると思います。

企業価値に注目するのか、デイトレーダーのように、値動きだけにフォーカスするのかで「いい銘柄」の基準は違ってきます。

いろんな視点で銘柄を検討し、買ったり売ったりの株式投資で、確実に利益を得られる投資家として、「儲かったら売る」「価値ある銘柄を見分けて再投資」などの投資行動を徹底できれば、後悔の少ない投資ができると思います。

木村佳子(きむら・よしこ)
生活経済情報研究所 ㈱ビューズ代表、日本取引所JPX/女性講座グランドマスター。個人の生活経済、金融リテラシー、ストラテジーをテーマに民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催するセミナー等での基調講演を務めるかたわら、NPO法人日本IRプランナーズ協会理事、日本チャート分析家協会、一般社団法人くらしとしごと生活者フォーラム代表理事などの要職も務める。一級FP技能士(国家資格)。日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP。公的面では各省庁の審議会委員、専門委員などを務める。

最終更新:5月22日(日)16時10分

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