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電車で都心へ行かずとも 東急がサテライトシェアオフィス事業 鉄道会社がなぜ?

乗りものニュース 5月22日(日)14時0分配信

育児中の社員も都心部まで通勤せずに

 東急電鉄が2016年5月20日(金)、サテライトシェアオフィス事業「NewWork」を横浜(横浜市神奈川区)、自由が丘(東京都目黒区)、吉祥寺(東京都武蔵野市)の3店舗で開始しました。

「サテライトオフィス」とは、本社や支店などから離れた場所に通信環境などを整え、そこで仕事ができるようにしたオフィスのこと。ちなみに徳島県は2013年から、過疎集落にも整備された「全国屈指のブロードバンド環境」を生かし、県内にサテライトオフィスを開設する企業に対して支援を行っています。

 このたび東急電鉄が展開する「NewWork」は、木材を多く使ったカフェのような雰囲気。料金は、「従量制プラン」が月額5000円で8時間無料、それ以上は1時間あたり別途500円です。「定額制プラン」は月額3万円で、午前8時から20時までの営業時間内は使い放題。サテライト“シェア”オフィスであるため、ほかの企業との交流が行えるイベントも計画しているそうです。機密性を保てる“個別ブース”も設けられています(料金は店舗によって異なる)。

 ターゲットは法人で、育児中の社員も都心部まで通勤せずに仕事ができる、オフィスコストの削減、災害時対策といったメリットがあるとのこと。都心部にオフィスを持たない外資系企業や、地方の企業から問い合わせがあるそうです。

 しかし、東急電鉄は鉄道会社。その鉄道へあまり乗らなくて済むようになるサービスを、なぜ提供するのでしょうか。

多くの私鉄が共通して抱える「困難な未来」

 総務省は2015年の国勢調査で、日本全体の人口が調査を開始して以来初めて減少に転じたことを発表しましたが、東急電鉄も2012年に公表した経営計画において、沿線17市区の人口が2025年ごろから減少に転じると予想。そこで「沿線価値」を向上させていかに利用者を繋ぎ止めるかが現在、東急電鉄のみならず、多くの私鉄で共通する課題になっています。

 京王電鉄は保育園の開設、高齢者向け移動販売の開始などで「住んでもらえる、選んでもらえる沿線を目指す」としているほか、小田急電鉄も家事の代行などをする「小田急くらしサポート」といった事業を通じ「日本一暮らしやすい沿線」を目指すとしています。ライフスタイルに直結する事業への参入は、「沿線価値」を向上させるひとつの手法といえそうです。

 そうしたなか東急電鉄は「ライフスタイルやワークスタイルのイノベーションを推進し、『沿線に住み続けたい』『沿線で働きたい』と思っていただける新たな価値を提供」することを掲げ、同社が力を入れている二子玉川(東京都世田谷区)の開発については、「新しいワークスタイルを叶える次世代のビジネス都市」「日本一働きたい街」を目指すとしています。

 二子玉川は「住みたい街ランキング」などでしばしば登場する街ですが、近年では「ビジネス都市」の側面も見せ始め、2015年には楽天が本社を同地へ移転。「二子玉川駅の乗降客数が増加したほか、住む人も増えてきた」(東急電鉄)といい、「ワークスタイルイノベーション」の推進によって沿線人口が増加したケースが、すでにあるようです。

「鉄道会社」という立ち位置とは、一見すると相反するような東急電鉄のサテライトシェアオフィス事業参入と、それによる「ワークスタイルイノベーション」の推進は、同社の沿線価値を向上させ、沿線人口の増加に繋げるひとつの施策といえます。

 ただ一方で、「ワークスタイルイノベーション」により東急線の利用が減ってしまうことも考えられます。これに対して同社は、「『NewWork』を利用するベンチャー企業が成長し、東急電鉄が提供する渋谷のオフィスに入居することも期待している」とのこと。「電車に乗らなくても」が、さまざまな事業へ波及効果、相乗効果をおよぼすかもしれません。

青山陽市郎(乗りものニュース編集部)

最終更新:7月14日(木)14時46分

乗りものニュース