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社説[オバマ氏との面談]政府の責任で実現図れ

沖縄タイムス 5月24日(火)5時0分配信

 被害者の父親が23日、事件後初めて、遺体が見つかった恩納村の現場を訪ねた。娘の魂を拾いに来たという。
 県道脇の雑木林の地面にひざをつき、花を手向け、ふり絞るような声で娘の名前を呼んだ。
 「お父さんだよ。みんなと一緒に帰るよ。おうちに帰ろう」
 かけがえのない一人娘をなくした父親の震える声が木立を包み、周りに響く。
 この日、東京では翁長雄志知事が安倍晋三首相に会い、語気強く遺体遺棄事件の発生に抗議し、日米地位協定の見直しを求めた。
 「綱紀粛正とか再発防止とか、この数十年間、何百回も聞かされた」
 だが、安倍首相から返ってきた言葉は「実効性のある再発防止策」というお決まりの文句だった。
 沖縄の現実は、再発防止策で事態を取り繕うような段階をとうに過ぎている。再発防止策は完全に破綻したのだ。
 本土の多くの人たちは知らないかもしれないが、沖縄でサミットが開かれた2000年7月、クリントン米大統領は森喜朗首相と会談し、米兵による相次ぐ事件に謝罪。その日の夜、クリントン大統領は、キャンプ瑞慶覧に1万5千人の軍人・軍属とその家族を集め、「良き隣人たれ」と訓示した。
 16年前の構図が今も繰り返されているのである。
 事件発生のたびに米軍は夜間外出禁止や飲酒禁止などの再発防止策を打ち出し、外務省沖縄事務所は米軍関係者を対象に「沖縄理解増進セミナー」を開いた。
 さまざまに手を尽くしても米軍は軍人・軍属による性犯罪を防ぐことができていない。現実は、県民の受忍限度をはるかに超えて深刻だ。
 翁長知事は、安倍首相との会談で、サミット参加のため訪日するオバマ大統領に面談する機会をつくってほしい、と要請した。
 クリントン氏の「約束」が実現できていない現実を踏まえ、政府はあらゆる手を尽くして翁長知事とオバマ大統領の面談の実現を図るべきである。
 米国陸軍歴史編纂(へんさん)所が発行した軍政文書を収めた「沖縄県史資料編14 琉球列島の軍政」はこう記している。
 「少数の兵士は米軍の沖縄上陸と同時に、住民を苦しめ始めた。とくに性犯罪が多かった」
 沖縄の女子を「かどわかした罪」で3人の米兵を追っていた沖縄の警察官が容疑者に射殺されるという事件も起きている。
 米軍関係者による凶悪な性犯罪が、復帰後44年たった今も、繰り返されているのはなぜか。沖縄が世界的にもまれな、基地優先の「軍事化された地域」だからだ。
 日本政府がその現実を承認し性犯罪の発生に有効な手だてが打てない状況は主権国家として恥ずべきことである。政府の政策は、沖縄の犠牲を前提にした差別的政策というほかない。
 基地問題は今回の事件によってまったく新しい局面を迎えた。
 基地の撤去、海兵隊の削減・撤退、地位協定の見直し、実効性のある再発防止策-これらの対策を組み合わせた抜本的な解決策が必要だ。

最終更新:5月24日(火)5時0分

沖縄タイムス