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社説[蔡総統就任]沖台関係の進展に期待

沖縄タイムス 5月25日(水)5時0分配信

 ことし1月、台湾の総統選で歴史的大勝をした民主進歩党の蔡英文主席が第14代総統に就任した。8年ぶり3度目の政権交代で、女性の総統就任は台湾史上初めてだ。
 国内総生産の40%を中国資本に依存する台湾は近年、一時10%台まで上昇した経済成長率が低迷。経済格差が広がり、若者の失業率は13%まで上昇した。
 蔡氏は、年金改革や社会保障制度の整備による格差是正を掲げ、「中国がくしゃみをすれば台湾が風邪をひく」と言われるようになった経済構造からの脱却を訴えて台湾住民の支持をつかんだ。
 依存体質への批判の背景には、台湾で生まれ育った若い世代に広がる「台湾アイデンティティー」がある。昨年の世論調査で、自分は「台湾人」と答えた人は59%に上り、「中国人」は3・3%と過去最低だった。
 一方、独立志向が高い民進党出身の総統誕生に、中国大陸・マカオ・香港・台湾を不可分の国家とする「一つの中国」を推し進める中国側は警戒感を強める。
 馬英九前政権は1992年に中台の当局間で「一つの中国」に関して合意した「92年合意」を原則とする立場をとっていた。
 これに対し蔡氏は就任演説で、92年に中台の当局が会談した歴史的事実を「尊重する」としながらも合意解釈には触れず、「両岸(中台)関係の平和で安定的な発展を推進する」と述べた。
 国家の安定を大前提とする蔡氏が、台湾アイデンティティーと外交のバランスに配慮した形だ。
 中国側にも現実的で冷静な対応が求められる。
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 対日政策において蔡政権は、行政院長経験者で2008年の総統選で民進党の公認候補だった謝長廷氏を新しい駐日代表として派遣することを決めた。日台関係を重視する意向の現れだ。
 政権交代直前に起きた沖ノ鳥島近海での台湾漁船拿捕(だほ)事件や、尖閣諸島沖の漁業権問題など、領土・領海問題を巡り日台間の潜在的リスクは存在する。
 しかし蔡氏は「争いを棚上げする」と述べた。菅義偉官房長官がこれに歓迎の意を表明し、式典に翁長雄志知事が列席するなど、日台の政治経済交流はこれまでにないほど良好だ。
 特に県内では、昨年4月に那覇港管理組合と台湾の主要港を管理する台湾港務とのパートナーシップ港の覚書(MOU)締結や、11月の「沖縄県トップセールスin台湾」の成功など結び付きが活発化している。
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 沖縄の「ものづくり」の国際競争力を高めるアジア経済戦略構想の実現を目指す県にとって、台湾はアジアへの扉でもある。
 中華圏ネットワークから中国との関係深化も狙う県にとって、現実路線を前面に推す蔡政権の台頭はメリットが大きそうだ。
 県内の好調な景気を背景に近年は、台湾から沖縄への投資も活発化している。平和外交を土台にした沖台関係の深化に期待したい。

最終更新:5月25日(水)5時0分

沖縄タイムス