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世界各国の財政は5年単位の大きな転換点にあるかもしれない

ZUU online 5月26日(木)11時2分配信

2010年からの5年間は、グローバルな需要不足と、それにともなう貿易活動の停滞とデフレ懸念が特徴であった。振り返ってみると、リーマンショック後の財政拡大の反動で、強い財政再建の方向性で合意した2010年のG20がその動きを決したと考えられる。

■「金融政策だけで解消」から「財政再建に強くコミット」へ

当時はまだ、需給ギャップは金融政策のみで解消することができるという古い経済学の影響力が強く、金融緩和の強化と財政再建のコンビネーションが有効であると信じられてきた。

しかし、企業のディレバレッジによる貯蓄行動を財政赤字で十分にオフセットしなければ、量的金融緩和によってマネタイズするネットの資金需要が弱く、金融政策の効果は限定的となり、それでも金融緩和に依存し続ければ、いずれ緩和手段が限界に達し、マーケットの信任が低下してしまうことが明らかになっている。

日本も、財政再建に強くコミットせざるを得なく、アベノミクスの財政政策も、震災復興以外は、抑制されたものにとどまってきた。規制緩和を含めた成長戦略を強く推進するためにも財政支出が必要であり、財政再建の強いコミットメントのもとでは、困難化してしまった。

そう考えると、金融政策への過度な依存への反動で、財政拡大を含めた政策を総動員することで合意した2016年のG20、そしてその流れを加速するG7は新たな転換点かもしれない。

■財政再建がグローバルな需要回復とインフレ復活の鍵

5月20・21日の日本におけるG7財務相・中央銀行総裁会議でも、各国の状況に応じて、金融政策・財政政策・構造改革をバランスよく用いることを再確認し、需要拡大によりG7で世界経済の成長を牽引するため、少なくとも財政再建が主眼であったこれまでの方針は転換した。

5月26・27日のG7サミットでも、世界経済の成長促進のため、金融政策・財政政策・構造改革をG7版の三本の矢と位置づけることが、首脳宣言で確認される見通しだ。安倍首相は、議長国としてグローバルな需要拡大のためのコミットメントを求められ、そして7月の参議院選挙へのアピールのため、相当な覚悟で政策面での日本のリーダーシップを発揮しようとするだろう。

2010年からの5年間は緊縮財政などによるグローバルな需要不足とデフレ懸念が特徴であったが、これからの5年間は財政が緩和気味になれば、グローバルな需要回復とインフレ復活が特徴になるかもしれない。

2010年の時点で、財政再建がこれほどの長期的な需要停滞につながると予想できなかったように、現在の方向感の変化もまだ実感は弱いが、2020年の時点ではここが転換点であったことが分かるだろう。

そうなると、財政政策によるネットの資金需要を作り出す動きがこれまでより強くなると考えられ、追加金融緩和がなかったとしても、既存の枠組みでの金融緩和の効果がより強くなる。

■固定観念を取り払い、サミット議長国として他国を牽引できるのか

グローバルなマーケットの反応も、金融緩和には限定的で、財政拡大を求めるようになってきており、次の手は金融緩和ではなく財政政策の方が効果が大きいとみられる。2016年後半には、財政政策が緊縮から緩和的に変化することにより、ネットの資金需要が再拡大し、それをマネタイズする金融政策の効果も大きくなり、マネーと名目GDPの拡大を基点とするデフレ完全脱却に向かうアベノミクスのモメンタムは復調していくと考える。

深刻な高齢化で日本はもはや財政を維持することができないという固定観念が、この20年間の日本経済の停滞の一因になっていたと考えられ、財政再建の負担が軽くなり、デフレ完全脱却を目指すアベノミクスにはグローバルに追い風が吹いてきたと考えられる。

1月の2015年度の補正予算による経済対策(3.5兆円程度)、この5月の震災対策(1兆円程度)、そして7月の参議院選挙後に2016年度の補正予算による大規模な景気対策(最低5兆円)が実施される可能性がある。

2020年度の東京オリンピック、そしてその翌年度の名目GDPの600兆円の達成までは、財政緊縮路線を緩め、デフレ完全脱却でグローバルな需要拡大に貢献する方針に転換する可能性が更に高まったと考える。

G7サミットの議長国として、日本が先鞭をつけ、政策効果をみせれば、他国も追随し、グローバルな需要回復とインフレ復活への道が開けるだろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

最終更新:5月26日(木)11時2分

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