ここから本文です

中国で興収記録を塗り替えた『映画 ビリギャル』ヒットの理由

dmenu映画 5月27日(金)19時16分配信

有村架純主演の『映画 ビリギャル』(中国タイトル『塾底辣妹』)がこの4月、中国で公開され、ランキング7位で興行成績トップ10入り。これまでの実写日本映画の中国国内での興行記録を塗り替える快挙となった。と同時にこのヒットで、ある中国の事情が明らかになった。

中国事情の話の前に、まずはこのヒットの手ごたえを確認してみたい。2015年、中国で上映された外国映画は63本。そのほとんどがハリウッド大作で、日本映画は2本のみ。公開されたのは『STAND BY ME ドラえもん』と『名探偵コナン 業火の向日葵』とアニメーション映画。どちらの作品もヒットとなったが、特に3Dアニメ『STAND BY ME ドラえもん』は並み居るハリウッド映画を蹴散らし、中国国内の興行成績23位(外国映画では11位)となる、5億3570万元(約90億950万円)の興行収入を叩き出した。

アニメーションが好成績をあげる一方、実写の日本映画の中国での興行はずっと苦戦してきた。古くは中国で8億人以上が見たといわれる高倉健主演作『君よ憤怒の河を渉れ』(76)などの大ヒットもあるが、それは40年以上前の話。それに当時の中国では、映画鑑賞は無料だったので興行収入での比較はできない。近年は、『感染列島』(09)『GOEMON』(09)『ノルウェイの森』(10)が公開されたが、興行成績はかなり厳しかったようだ。そんな中の7位初登場、公開初週2200万元(約3億7千万円)のヒットとなった『映画 ビリギャル』は、実写の日本映画にも鉱脈があることを感じさせてくれた。

一体、中国ではどの辺りが受けたのだろう。映画を見た人々の感想は、「泣けました」「励まされた」「自分の青春時代を思い出した」「“全世界がダメなやつだと言ってもそんなことはない”とこの映画は教えてくれた」などと好評。満足度も10点満点中、9.5、9と極めて高かった。その理由は、中国が日本以上の学歴偏重社会であること。だからこそ、成績の悪い女子高生が、彼女を肯定してくれる母親や塾の講師の応援のもと、名門大学に合格する『ビリギャル』のサクセスストーリーが響くようだ。大都会である北京や上海の予備校で一日15時間、点滴を打ちながら勉強し、受験戦争をくぐり抜けた中国の若者が見ると「勇気づけられる」という。

中国では大学に入学できるのは、受験生の約50%なのだそう。しかも、「ある大学群に入学できなければ人生を切り拓くことはできません。特に地方出身者は」と中国の映画業界関係者はいう。
ある大学群とは、
1.北京大学、清華大学、復旦大学、上海交通大学、浙江大学などいわゆる名門校 
2.北京、上海、広州、シェンヂェンにある大学 
3.985工程(国際レベルの研究に重点投資する大学)、または211工程(21世紀的研究に重点投資する大学) 
4.工学、経済、言語、芸術、技術に特化した伝統校
など。そのため、中国最高峰の北京大学や、工学分野で世界1位となった清華大学などの競争率は数百倍(!)にもなるのだという。

ただし中国の映画業界関係者に言わせれば、公開初週2200万元(約3億7千万円)の興行成績は、「中国での映画興行としては必ずしもヒットとは言い難い」のだそう。とはいえ「実写日本映画としてはまずまずの数字。それゆえ市場としては十分にあると感じています」という。「中国政府は、『ビリギャル』のような映画をどんどん輸入したい意向です。理由としては、コツコツ努力することの大切さを伝える映画が欲しいから。中国政府はいま、道徳的な示唆を与える日本映画を強く欲しています」。アメリカに次ぎ世界第2位という魅力ある中国映画市場。これから日本映画が、どこまで中国側の需要を掴み、存在感を示せるか楽しみだ。

(1円=0.059元)

文=高村尚

最終更新:5月27日(金)19時16分

dmenu映画