ここから本文です

社説[オバマ氏広島訪問]核抑止論からの転換を

沖縄タイムス 5月28日(土)5時0分配信

 オバマ米大統領が27日夕、広島を訪れた。人類史上初めて原爆を投下した国の現職大統領が被爆地の土を踏んだ意義は大きい。
 原爆慰霊碑に献花した後、被爆者らを前にした所感でオバマ氏は「私の国のように核を貯蔵している国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければならない」と改めて決意を表明した。核抑止論が核兵器廃絶の障害になっていることを示唆したものだ。
 所感の冒頭でオバマ氏は「71年前、雲一つない朝、空から死が落ちてきて、世界は変わった」と述べ、「女性や子どもを含む10万人以上の日本人、多くの朝鮮半島出身や米国人捕虜を追悼するために来た」と語った。「広島と長崎は核戦争の夜明けとしてではなく、道徳的な目覚めの始まりとして知られるだろう」と所感を閉じた。
 大統領に就任した2009年のプラハ演説で「核兵器を使用したことがあるただ一つの核保有国として、米国は行動する道義的な責任を負っている」と「核なき世界」をうたい上げた。広島訪問はそれを締めくくるものだ。
 原爆のきのこ雲の下では地獄のような惨劇に見舞われ、多くの無辜(むこ)の市民が犠牲になった。生き残った人々もなお後遺症に苦しめられている。
 オバマ氏は、被爆の悲惨な実態を伝える原爆資料館を訪れた。資料館で凄惨(せいさん)な原爆の実相を感じることができたのならば、プラハ演説の「核なき世界」の理念に、魂が吹き込まれたに違いない。
 オバマ氏は原爆投下の謝罪をしなかった。米国内に「原爆正当化論」が根強く残るからだ。日米の両方をにらんだぎりぎりの行動である。
■    ■
 オバマ氏の任期は来年の1月までである。
 所感で「核なき世界」を表明したが、道筋を明らかにすることはできていない。核政策に関しては希望と現実の乖(かい)離(り)が激しく、核保有国は核軍縮に消極的である。
 プラハ演説以降、二大核保有国の米ロが対立し、核軍縮は遅々として進んでいないのが現状だ。しかし、プラハ演説でノーベル平和賞を受賞した大統領として、最後まであきらめることなく具体的なアプローチを示すよう努力を尽くしてほしい。
 核保有国の元首であるオバマ大統領の広島訪問をきっかけに、核保有国のトップの広島訪問を呼び掛けたい。
 広島で起きた惨劇を目の当たりにすれば核兵器の非人道性に圧倒されるはずである。
■    ■
 安倍晋三首相はオバマ氏に続く所感で広島訪問を「世界中の人々に大きな希望を与えた」と表明、「核なき世界」に向け「日本と米国が力を合わせ、希望を生み出すともしびとなる」と語った。
 だが、翻って、日本は唯一の被爆国としての責務を果たしているだろうか。
 米国の「核の傘」から離脱せず、核抑止力を肯定するような外交政策をとるなど矛盾している。
 「核と人類は共存できない」ことを国際社会の先頭に立って訴えることこそが日本の存在意義である。

最終更新:5月28日(土)5時0分

沖縄タイムス