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<連載>北朝鮮への人道支援はどうあるべきか ~役立つ支援と有害な支援~1 北朝鮮は「脆弱国家」である 石丸次郎

アジアプレス・ネットワーク 5月30日(月)10時52分配信 (有料記事)

◆はじめに

本稿は「『脆弱国家』北朝鮮にどう向き合うか」という視点から、国際社会が北朝鮮に人道、開発援助を行う際に留意すべき課題について考察したものである。

ソマリア、アフカガニスタン、チャド、イラク、シリアなどアフリカや中東地域の内戦・紛争国は、政府の統治が崩壊した「破綻国家」と呼ばれている。北朝鮮は、政権の統治が及ばない地域があったり、内戦が発生したりしているわけではないが、現体制は、国民の大半に対して充分な栄養、衛生、保健、飲料水など、重要な公共財を提供する能力を失っている。また、軍兵士による略奪や強盗殺人の頻発が数多く報告されており、治安維持にも不安定化が見える。つまり、「人間の安全保障」が脅かされている状態にあると言える。これは国際機関の様々な定義に基づけば「脆弱国家」に分類されるものであり、計画的な援助が必要である。

しかし、援助の方策を誤ると、その資金は軍事に流用されたり、さらに脆弱化が進んだりする危険性が指摘されている。大門毅(だいもん・たけし)早稲田大学国際教養学部教授による「脆弱国家」への援助の流用性に関する統計学的研究を、北朝鮮に当てはめて検討を試みた。大門の研究は、開発援助目的で供与された公的資金が、非生産部門、とくに軍事部門の支出に流用された可能性をアフリカ諸国のデータ(1980-99年)を用いて実証的に検証、数値化して示したものである。

金正恩体制下、多くの北朝鮮国民の経済的困窮は今後も続く可能性が高い。2016年1月の核実験と2月の長距離ロケット発射実験の強行によって、北朝鮮はこれまでより強力な経済制裁を国際社会から受けることになった。困窮する民衆には、制裁と区別して援助の手が差し伸べられねばならないが、その対象と方法の妥当性を探ることが重要である。いったい、北朝鮮住民のうち、だれが、なぜ食糧難に喘いでいるのかを分析することなしに有効な支援はありないからだ。

大半の北朝鮮住民にとってほぼ唯一の食糧入手経路であった国家食糧配給システムは90年代に麻痺状態に陥り、大量の餓死者を発生させた。そのシステムの回復ができない中で市場経済が自然発生的に急拡大して食糧入手経路が多様化したのが現在の北朝鮮である。今、北朝鮮住民の過半は配給をほぼまったく受けておらず、市場において現金で食糧を調達しているのが実情だ。対北朝鮮人道援助をより有効で、流用の少ないものにするためには、地域別、職業別、階層別に食糧にアクセスする方法を検討して対処する必要があるだろう。本文:6,348文字 この記事の続きをお読みいただくには、アジアプレス・ネットワークの購入が必要です。

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最終更新:5月30日(月)11時22分

アジアプレス・ネットワーク