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引退フェリー、災害支援に有効 しかし難しい現実

乗りものニュース 5月30日(月)7時0分配信

日本海で活躍していたフェリーが熊本で

 いま、被災者支援におけるフェリーの有効性が改めて注目されています。

 2016年4月14日に始まった熊本地震。発生から1週間もたたない4月20日に、270人の自衛官とトラックなどの車両80台、救援物資を満載し、神戸港から熊本・八代港へ派遣された大型フェリー「はくおう」(1万7345総トン)が同地で5月末まで、1か月以上にわたり活躍しました。

 同船がその設備で被災者向けの宿泊、供食、入浴サービスを開始したのは4月23日。それ以来、5月20日までに累計2000人を超える被災者へ「安息の場」を提供しました。乗船した被災者からは「余震の不安もありませんし、久しぶりに足を伸ばして眠れ、のんびりできました」「お風呂でリラックスできました」などの感想が寄せられているといいます。

 1995(平成7)年の阪神・淡路大震災や、2011(平成23)年の東日本大震災でも大型フェリーや客船による救援が行われましたが、これだけ迅速に被災地へ向かい、かつ長期にわたって支援を続けたケースは初めてのことです。

 実は、このたび熊本で力を発揮している「はくおう」は、かつて日本海航路で使用されていたフェリーです。「海国ニッポン」では、定期航路からリタイアするフェリーが数多く出ています。

 災害時の支援に有効で、定期航路からリタイアするものも少なくない大型フェリー。ならば、より一層それを活用して今後、「災害対策船」をさらに増強していこう、という考えは順当なところでしょう。

 しかしそれには、越えなければならないハードルがあります。

なぜ「はくおう」は迅速に対応できたのか

 災害発生時に大型フェリーを救援へに向かわせるには、日常的に行っている営業航海をどうするのか、費用をどこが負担するかといった問題が存在します。今回の熊本地震でも一部の船会社へ打診されたとみられますが、実現しませんでした。

 今回、地震発生からまもなくに被災地へ向かえた大型フェリー「はくおう」は、先述の通り定期航路から引退した船で、防衛省がチャーターしているものであったため、迅速に対応できたのです。

 現在、防衛省は災害対策や南西諸島への隊員輸送などを念頭に、この大型フェリー「はくおう」と、青森~函館間を結ぶ青函航路で使用された高速船「ナッチャンWorld」の2隻をチャーターしています。

 ただ、こうした災害を想定した船の確保は容易ではありません。「災害対策船」の有用性については過去の災害発生時から認識され、内閣府と国土交通省、防衛庁らが共同で、ないしは独自に、検討を続けてきました。しかし平時にどう使えばよいのか、運航要員はどう確保すればよいのか、そのコストはどうすればよいのか、といった課題が存在しているのです。

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最終更新:5月30日(月)10時48分

乗りものニュース