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水を使わない消化剤、泥炭・森林火災向けに注目

ニュースイッチ 5月30日(月)8時20分配信

シャボン玉石けん、水不足でも消火できるように

 東日本大震災や熊本地震など大規模地震が続発している。震災直後から自治体が特に留意するのが火災だ。1995年1月の阪神・淡路大震災では、神戸市長田区を中心に発生した火災が被害を広げた。住宅密集地で上水道が断水したため大型消防車が機能しなかった反省から、水を使わない泡消火剤の開発が始まった。シャボン玉石けん(北九州市若松区、森田隼人社長、093・701・3181)が開発した泡消火剤は全国の消防局で普及が進んでいる。

<鎮火しない、足元滑る…>

 震災後は建物が崩落し、道路も寸断され大型消防車は走行できなくなる。そこで求められるのは少量の薬剤で消火活動が可能な小型車や空中散布のためのヘリコプターだ。シャボン玉石けんは99年から水を使わない消火剤の開発に着手した。2001年には、北九州市消防局から開発依頼を受け、03年には北九州市立大学の上江洲一也教授らの研究グループも開発に参加。07年に「ミラクルフォーム」の名称で一般建築物用として商品化した。

 同消防局は00年から米国製の合成系泡消火剤を試験運用した。だが、思うように鎮火しない、散布後に足元が滑る、鎮火後に薬剤を洗い流す必要があるなど課題が多かった。北九州市は産業公害を克服して環境モデル都市に選ばれるなど環境問題に力を入れているため、消火剤といえども合成系薬剤の利用に反対の声も多かった。

 ミラクルフォームの主成分は毒性が低いせっけん。分解速度が速く、自然界に豊富にあるカルシウムやマグネシウムといったミネラル分と結合して界面活性が失われるため、生態系への影響が低い。また改めて洗い流す必要がない点も高い評価を得た。07年度には同社と上江洲教授、同消防局が内閣府の「産学官連携功労者表彰 総務大臣賞」を受賞した。

 現在、東南アジアやロシア、中国など広大な国土で発生する森林火災や泥炭火災向けに注目されている。森林火災は水がない、地中で発火する泥炭火災は水での消火が難しいなどの理由で泡消火剤の利用が進む。特にインドネシアで深刻な泥炭火災は、日本の総排出量並みの年間14億トンの二酸化炭素(CO2)が発生するなど深刻。現在、米国製消火剤を空中散布しているが広域すぎる上、薬剤が動植物に影響を及ぼすなど課題も多い。

<海外で本格販売>

 同社は国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業として、13年9月から16年3月まで約6000万円の事業費をかけ、インドネシア・バリクパパン市で泥炭・森林火災の実態調査などを行った。事業には北九州市や北九州産業学術推進機構(FAIS)、モリタホールディングスなども参画した。

 16年からいよいよ本格的な販売が始まる。既に現地の大規模農家から6トンを受注した。高橋道夫専務は「当社製品は地中への浸透性が高く環境に優しい。時間はかかるが、将来は現地生産も視野に入れる」と、地道に海外への浸透を図る。

最終更新:5月30日(月)8時20分

ニュースイッチ