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社説[消費増税再延期]筋が通らぬ首相の理屈

沖縄タイムス 5月31日(火)5時0分配信

 安倍晋三首相は、2017年4月に10%への引き上げを予定していた消費増税について19年10月へ2年半、再延期する方針だ。
 安倍首相は、公明党の山口那津男代表や自民党幹部と相次いで会談し、自民、公明両党は首相の考えを容認する方向に傾いている。これに対し、野党4党は党首会談を開き、内閣不信任決議案を31日に提出することを決めた。
 国会は最終盤を迎え、波乱含みの展開になってきた。
 15年10月に10%に引き上げる予定を延期し、衆院解散を正式に表明した14年11月の記者会見で、安倍首相は断固たる表現でこう約束した。
 「再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言する。景気判断条項を付することなく確実に実施する」
 さらに「3年間、三本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる」と大見えを切った。
 その後も「リーマン・ショックや東日本大震災級の事態が起こらない限り増税する」と、繰り返し発言してきた。
 ここに来て、再延期する方針に転換したのはなぜか。
 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で安倍首相は各国首脳に独自に作成した資料を提示し、世界経済の状況を「リーマン・ショック前に似ている」と力説し、財政出動の必要性を強調した。
 国際会議の場を国内政治に利用するという禁じ手を使ったというほかない。
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 安倍首相の「リーマン・ショック前」との認識に対し、ドイツのメルケル首相、英国のキャメロン首相らから異論が出た。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事も記者団に「2008年のような時期ではない。危機からは抜け出した」と語った。
 結局「リーマン・ショック前」との認識は首脳宣言でも触れられなかった。海外メディアも「増税延期計画」などと、安倍首相の国内向けの狙いを指摘し、批判した。
 首脳会議に先立つ財務相・中央銀行総裁会議で麻生太郎財務相は予定通り消費税増税を実施すると発言した。
 サミット直前に発表された月例経済報告でも世界経済について「全体としては緩やかに回復している。先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待される」と日本政府の公式見解が示されている。安倍首相の認識と整合性が取れていないのである。
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 安倍首相はなぜ、延期時期を19年10月としたのか。直前の参院選など選挙への影響を意識してのことだろう。だが、安倍首相の自民党総裁としての任期は18年9月までだ。増税の際には総裁の任期が切れている。無責任の極みだ。
 前回は消費増税見送りで「国民の信を問う」として衆院を解散した。今回はどうするのか。熊本地震が発生し被災地は厳しい状況が続く。消費増税の再延期は選択肢として否定するものではない。
 だが、世界経済の危機を理由に再び消費増税を延期するのであれば、安倍首相は政治的責任をとって退陣するのが筋である。

最終更新:6月2日(木)3時56分

沖縄タイムス