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日銀が積極的に購入を表明「賃上げETF」はアベノミクスの追い風になれるか

THE PAGE 6月3日(金)7時0分配信

 積極的に賃上げを実施する企業の株式を組み入れた上場投資信託(ETF)が相次いで、東京証券取引所に上場しました。市場では「賃上げETF」と呼ばれています。アベノミクスの追い風になると期待する声がある一方、日銀による金融機関の救済策にすぎないという手厳しい意見も出ているようですが、実際のところどうなのでしょうか。

「賃上げETF」とは?

 上場したETFは、大和証券投資信託委託の「ダイワ上場投信-MSCI日本株人材設備投資指数」、野村アセットマネジメントの「NEXT FUNDS野村企業価値分配指数連動型上場投信」、日興アセットマネジメントの「上場インデックス日本経済貢献株」です。

 各社の投信は、人件費の増加率や設備投資額の大きさなどについて独自に指標化を行い、アベノミクスの趣旨に沿った企業に投資するというものです。こうした投信が次々と上場しているのは、日銀が積極的に購入することをあらかじめ表明しているからです。日銀は昨年12月の金融政策決定会合において、年間3兆円のETF購入枠とは別に「設備・人材投資に積極的な企業の株式を組み入れるETF」を追加購入する方針を明らかにしました。アベノミクスの趣旨に沿った経営を行う企業の株式を積極的に購入することで、量的緩和策の効果を補完することがその主な目的です。

 日銀の意向に沿ったETFを組成すれば、日銀が確実に買ってくれるわけですから、当然、各社はこの主旨に合致する投信を積極的に上場させることになります。各社が組成を急いだ結果、今月の上場ラッシュとなったわけです。

 ではこの投信を一般投資家が買った場合、確実に儲かるのかというとそうとも言い切れません。このETFの組成にはいくつかの問題点があるからです。

日銀依存度が高いところが気になる

 政府の要請に応じて実際に賃上げを行う企業は、基本的に儲かっている企業と考えられます。実際、今回、上場した投信もトヨタやNTTドコモなど、いわゆる超優良株を中心にポートフォリオが組まれていると思われます。そうなってくると、既存の優良株を集めた投資信託と何が違うのかという疑問が出てきます。

 もしほかの投信との違いが、日銀による積極購入しかないのだとすると、市場はそれを織り込んで、取引価格が高めに推移してしまう可能性があります。賃上げのスピードや設備投資の増加が鈍化した場合、大きく下落することも考えられます。

 日銀への依存度が高い点もリスク要因となります。今のところ日銀は「賃上げETF」について、1日あたり12億円、年間で3000億円を上限に購入するとしています。このペースが続いた場合には、それなりの買い圧力となりますが、日銀の方針が変更された場合には、買い手が一気にいなくなってしまうかもしれません。いくら日銀がコミットしているとはいえ、投資は投資ですから、購入を考えている人は、慎重に判断すべきでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:6月3日(金)7時0分

THE PAGE