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社説[社会保障への影響]財源どうするつもりか

沖縄タイムス 6月1日(水)5時0分配信

 安倍晋三首相が来年4月の消費税引き上げを再び延期する方針を固めたことで、国民の生活を支える「社会保障の充実」が見通せなくなってきた。
 先送りによって家計の負担は当分の間、抑えられるかもしれないが、生活の安定や健康の確保に必要な社会保障まで先送りになったのでは話が違う。
 予定されていた社会保障施策の実施について、首相の説明を求めたい。
 政府は、10%の増税によって、社会保障の充実に2兆8千億円が使えると試算していた。8%の現在は、これが1兆3500億円にとどまっている。
 増収を当て込んで用意した施策には、保育の受け皿整備、低所得高齢者に対する介護保険料の軽減、低年金者へ毎月最大5千円の給付などがある。
 「待機児童ゼロ」に向けた保育の受け皿整備など子育て支援施策には7千億円必要と見込む。2016年度予算で確保できたのは6千億円。ここだけでも1千億円不足することになる。
 安倍政権の看板政策である「1億総活躍社会」の実現も不透明感が強まっている。
 社会保障に力点を置く「1億総活躍プラン」の目玉は、保育士や介護職員の賃上げ、返済不要の給付型奨学金の検討だが、いずれも財源の裏付けが乏しい。
 税収全体が小さくなれば、予算確保はますます困難となる。
 赤字国債を発行すれば、財政再建は遠のく。
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 2012年に民主、自民、公明の3党で合意したのが「社会保障と税の一体改革」だった。
 急速な少子高齢化で国の財政が悪化する中、年金や子育て、医療といった社会保障制度の維持に向けて、消費税率を段階的に10%まで引き上げようと3党で決めたのだ。
 今回の増税先送りは3党合意の根幹にも関わる問題である。
 「保育園落ちた日本死ね」の匿名ブログが示した深刻な待機児童問題、「年金だけでは生活できない」という高齢者の訴え、厳しい子どもの貧困など、課題はどれも待ったなしだ。
 思考停止に陥ってはいけないのは、消費税だけが財源ではないということだ。
 所得税、法人税、相続税など、もっと幅広い議論が必要で、資産があって所得に余裕のある個人、企業に負担を求めていくことは富の再分配にもつながる。
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 野党が提出した安倍内閣に対する不信任決議案が否決された衆院本会議で、自民党の松本純氏は「アベノミクスは大きな果実を生み出してきた」「日本経済は着実に回復に向かっている」と述べた。ならばなぜ増税を先送りするのか、理解に苦しむ主張だ。
 安倍首相は1日、記者会見し増税再延期を正式に表明する。国民が最も聞きたいのは、14年の衆院解散時に「増税を再び延期することはない」と約束したことである。
 説明責任をしっかりと果たしてもらいたい。

最終更新:6月1日(水)5時0分

沖縄タイムス