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大分で「待っちょるぞ」 修学旅行 キャンセル相次ぐ 農家民泊“悲鳴”

日本農業新聞 6月1日(水)12時30分配信

 熊本地震の影響で、大分県の農家民泊が深刻な打撃を受けている。例年は修学旅行生を迎え、田植えなどの農業体験で活気づく時期だが、キャンセルが相次ぎ、7月末まで予約はゼロ。孫のような生徒との交流を生きがいにしている高齢農家が多いだけに、現場からは正確な情報発信を求める声が上がっている。

「孫と同じ」「秋はぜひ」

 全国に先駆け1997年にグリーンツーリズム推進宣言を出した宇佐市安心院町。農業体験や田舎暮らしが都会っ子の心をつかみ、農家民泊は20年続く。高齢化が進む中、農家60人がNPO法人安心院町グリーンツーリズム研究会に所属し、年間8500人の修学旅行生を受け入れている。地震がなければ5、6月は修学旅行のピークだが、今年は4224泊分がキャンセルとなった。

 同町で農家民泊「古里ガーデン森山」を営む森山照子さん(73)は、夫の繁則さん(74)と生徒の受け入れを続けて13年。生徒と一緒に楽しむはずの田植えや野菜の収穫作業も今年は夫と2人きりだ。生徒のために残しておいた作業を片付けながら、秋の収穫に向けて苗の準備を進める。繁則さんは「生徒が来てくれることが張り合い。早く帰ってきて」と願う。

 食事のおいしさが評判の「桃源郷こびら」を営む江藤憲子さん(65)も同じ気持ちだ。かまどで炊くご飯や裏山の竹を使った流しそうめんが人気で、緊張していた生徒も表情が変わり、帰る頃には涙を流す男子生徒もいるという。江藤さんは「余震がないとも言い切れず、宣伝もしにくい。それでも戻ってきてほしい」と本心を明かす。

 秋に修学旅行を予定する中学校からは、農家宅の築年数や避難場所の有無などを尋ねる質問表が同研究会会長の宮田静一さん(66)に届いた。「九州全土は危険というイメージが根強い。今は丁寧に応対していくだけ」と話し、教育委員会に出向き、地震の影響を詳しく説明する日々だ。

 豊後高田市のグリーンツーリズム推進協議会も5、6月に予定していた中学校5校1200人が全てキャンセルとなった。秋に変更した学校もあるが、年間3000人の予定が700人減る見込みだ。NPO法人竹田市観光ツーリズム協会でも、台湾や韓国から計50人のキャンセルが相次いだ。県は「九州離れの長期化は避けたい。PRを強化し、需要回復へ支援したい」と強調する。

観光復興 政府が支援

 政府は31日、九州の観光を支援するため「観光復興に向けての総合支援プログラム」を発表した。国内外の旅行者を対象に、ホテルの宿泊代やツアー料金を最大70%割引できる制度を設け、計180億円の必要経費を各県に交付する。割引は旅行会社を活用したツアーなどが対象。熊本、大分両県は7~9月で平均50%、最大70%の割引が可能となる。

 修学旅行への対応は5月上旬、文部科学省と連携して市町村教育委員会に対し、正しい情報に基づいた冷静な対応を呼び掛ける文書を通知した。(木原涼子)

日本農業新聞

最終更新:6月1日(水)12時30分

日本農業新聞