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禁断の値下げ 日本で不振のフォルクスワーゲン

ニュースソクラ 6月1日(水)16時0分配信

輸入車販売首位から転落 値下げでブランド価値毀損の懸念も

 独フォルクスワーゲン(VW)の国内新車販売が低迷している。排ガス不正問題で消費者の支持を失ったことが大きな要因だ。打開策としてVW日本法人は5月17日、主力車「ゴルフ」などを4万円から最大16万円(2%前後~6%)値下げすると発表した。値下げは一時的な需要を得る可能性はあるが、元の値段に戻りにくい「禁断の果実」。品質に厳しい日本の消費者に対するなりふり構わない対応の成り行きに、国内の自動車業界が注目している。

 ゴルフは日本車で言えばトヨタ自動車の「カローラ」や「プリウス」に代表される「上級コンパクトカー」ないし「ミドルクラスセダン」と呼ばれるジャンルに属し、日本国内ではまさに主戦場で、競合車は多い。16万円の値下げによって249万9000円と250万円を切る機種を投入した。コンパクトカー「ポロ」では199万9000円と7年ぶりに100万円台を復活。割安感を出すことで消費者の購買意欲を呼び覚ます戦略だ。記者会見でVW日本法人のティル・シェア社長は「魅力的な価格を紹介します」と胸を張った。

 ほんの2年前にはとても考えられない光景だ。もともと道路幅の狭い日本の事情に合った小型車が得意なVWは2014年、消費税率アップの影響で伸び率こそ前年比0.2%増にとどまったものの、国内で6万7438台を売り、なんと15年連続となる輸入車(海外メーカー)首位の称号を獲得していた。当時の日本法人社長は伊藤忠商事出身の庄司茂氏。2015年に向けた鼻息は荒く、輸入車として前人未踏の7万台を目標に掲げ、攻勢をかけた。

 VWにとっての誤算は2015年9月にディーゼル車の排ガス試験での不正が発覚する前に訪れる。アベノミクス(安倍政権の経済政策)によって円安・株高となり、国内富裕層の懐が温まったことで同じドイツの高級車「メルセデス・ベンツ」の販売が好調で、2015年1~6月の新車販売台数で首位を明け渡してしまったのだ。勢いはベンツの方にあり、2015年通年で巻き返すのはなかなか難しそうだった。そんななか、「当時のドイツ本社の意向で庄司社長は『半期で首位陥落の責任』をとらされ、事実上解任された」との指摘が業界でよく聞かれる。

 そんな状況で舞い込んだ知らせが9月の排ガス不正問題だ。問題のクルマを販売していた米国や欧州では2015年の新車販売が、実は前年比プラスだったのに対し、対象のディーゼル車を販売していない日本では、2015年の新車販売が前年比18.8%減の5万4766台にまで落ち込み、首位を譲ったメルセデス・ベンツ(6万5162代)との差は1万台以上もついてしまった。それだけでなく、2014年に2万台以上の差をつけていた独BMW(4万6229台)との差が1万台を切る水準に肉薄された。

 こうした状況は、2016年に入っても好転していない。最新の4月の統計を見ると、VWはメルセデス・ベンツだけでなく2位BMWの後塵を拝し、輸入車3位で前年同月比8.0%減の2346台にとどまった。1~4月の累計(1万5937台)は何とか2位に収まっているが前年同期比22.5%減と落ち込みが大きく、BMW(8.1%増、1万5484台)との差がわずかとなっている。

 こうした状況で起死回生を図ったのが、今回の値下げ作戦だ。しかし、業界では「長年日本国内で培ったブランド力をおとしめる」(国内自動車メーカー幹部)との指摘も聞かれる。VWの「危険なかけ」は吉と出るか、凶と出るか。

ニュースソクラ編集部

最終更新:6月1日(水)16時0分

ニュースソクラ