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5月米雇用統計「事前予想が控えめ」な理由

ZUU online 6月2日(木)18時10分配信

6月3日に5月分の米雇用統計が発表される。6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ観測が強まるなか、ウォール街の市場関係者からも「雇用統計で堅調な数字が確認されれば、6月の利上げもありうるだろう」との声が聞かれる。ただし、事前予想をみると雇用者数や賃金の伸びが加速する様子はうかがえない。事前予想が控えめなのはなぜか。また、それにもかかわらず利上げ観測が後退しない背景を探ってみよう。

■ストの影響で16万人増と低めの予想

まず、4月の数字を確認すると非農業部門の雇用者数は16.0万人増加と事前予想の20万人増加を下回った。5月分の事前予想も16万人程度の増加となっており、低調だった4月と同程度の数字が見込まれている。過去1年の月平均が22.4万人、3カ月平均では20.0万人となっていることを踏まえると、雇用の拡大が鈍化しているようにもみえるが、今月はストライキが影響しているので割り引く必要がある。

米通信大手ベライゾンの従業員3.5万人が4月13日からストライキを実施し、雇用統計の調査週に当たるこの週の給与を受け取らなかった。この影響で、5月の雇用者数が少なくとも3.5万人押し下げられる可能性がある。

解雇ではなく、ストライキでなぜ雇用者数が減少するのか不思議に思うかもしれないが、失業率を算定している家計調査とは違い、事業所調査では雇用されているかどうかではなく、給与を受け取っているかどうで雇用者数をカウントしている。したがって、契約上は雇用者であっても、給与を受け取っていなければ雇用者数には入らない。

給与明細書作成代行会社のADPが給与明細に基づいて雇用者数を推計しているが、この数字が米労働省の公表している雇用統計の雇用者数と相関が高いとされているのはこのためである。ベライゾンのストライキはすでに終結が伝えられており、6月分の雇用統計への影響はなくなる見通しとなっている。

したがって、16万人増加との予想は実質的には20万人増加に等しく、これまでのトレンドを概ね継続することを意味している。仮に、2カ月連続で16万人の増加にとどまったとしても雇用の拡大ペースが鈍化しているわけではないことに留意したい。

■カレンダー要因の影響で賃金の伸びも低めかも?

4月の雇用統計では賃金の伸びが前月比0.3%上昇と高い伸びを示したことがサプライズとなり、物価上昇への警戒から利上げ時期が早まるのではないかとの見方を強めた。ただし、ここにも統計作成上でのクセが影響している可能性がある。事業所調査は毎月12日を含む週に実施されているが、この週に15日が含まれるかどうかが賃金に影響を与えているかもしれないからだ。

一般に給与は月払いが多いのだが、米国では週払いや月に2回というのも珍しくはない。月2回の場合、15日が含まれるかどうかが分岐的となる。たとえば、今年1月の賃金(平均時給)は前月比0.5%上昇とこの1年で最も高い伸びを示したが、2月は横ばいにとどまった。カレンダーをみると、昨年12月の調査週には15日は含まれず、1月は含まれたが、2月は含まれていない。5月はどうだったかというと含まれていない。ということは、5月の賃金の伸びは意外と低いかもしれないということだ。事前予想も前月比0.2%上昇と4月を下回っている。

もちろんカレンダー要因がすべてはないのだが、5月分に関しては低い数字がでても、数字通りには受け止めず、前年比や3カ月平均などでならしてみるほか、6月の統計まで判断を保留するなどの工夫が必要かもしれない。

■FOMC前の最後のピース、数字は弱めでも利上げを後押しか

次回のFOMCは6月14、15日に予定されている。4月のFOMC議事録では「4~6月期に成長が加速し、インフレが2%に向けて進捗している場合、6月の利上げは妥当」としており、地区連銀総裁からは6月利上げに前向きは発言が相次いでいることも踏まえると、利上げへ準備は整ってきていると言えそうだ。

なかでも、4~6月期の成長見通しが明るくなっている。アトランタ連銀が公表しているGDPナウでは、5月31日現在の4~6月期の成長率は前期比年率2.9%増加、5月27日時点でのニューヨーク連銀のナウキャスティングでは2.2%増加となっており、1~3月期の0.8%増加から大きく加速する見通しだ。

5月の雇用統計はほぼ最後のピースとなりそうで、堅調となれば利上げ確度はかなり高まることが予想される。既に述べたとおり、ストライキやカレンダー要因から雇用者数や賃金の伸びはやや低めの数字となりそうだが、特殊要因を考慮すると、予想通りの数字であれば利上げを後押しするに十分な水準であろう。

雇用者数について、イエレン議長は「新規参入者を吸収できる雇用者数の増加は10万人」としており、この水準を上回る限り利上げは正当化できると判断できそうだ。また、イエレン議長は2%の物価目標を達成するためには3~4%の賃金の上昇が必要としているが、昨年12月の利上げ開始時点での賃金の伸びが2%台半ばだったことから、2.5%前後あれば利上げに支障はないと考えられる。4月の賃金の伸びは前年同月比で2.5%上昇とこの水準を満たしており、さらに加速させる必要は乏しいと思われる。

CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が公表しているフェドウォッチによると、6月FOMCでの利上げ確率は5月31日現在で21%とやや伸び悩んでいる。一方、7月のFOMCは57%となっており、6月は見送り、7月に利上げの方向でマーケットはみているようだ。今回の雇用統計の発表を受けて、市場が利上げ確度を上げてくるのかどうかに注目したい。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

最終更新:6月3日(金)10時43分

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