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新安保法の想定問答にびっくり解釈を発見

ニュースソクラ 6月2日(木)12時0分配信

ミサイル発射地点まで自衛隊駆けつけ可能

 昨年の安保関連法案の審議において争点の1つとなったのが、「現に戦闘行為が行われている現場」だ。

 安保関連法案では、戦闘中の米軍などに対して自衛隊が行う後方支援の範囲をこれまでの「非戦闘地域」から「現に戦闘行為が行われている現場」以外に拡大が図られた。これに対しては野党は、自衛隊の活動範囲がより戦闘現場に近づくことから、「自衛隊のリスクが飛躍的に高まる」と政府を追及したのだ。

 現代軍隊の機動展開の速さを鑑みると、「現に戦闘行為が行われている現場」とそれ以外の線引きには曖昧さが残るが、ミサイルの発射地点が「現に戦闘行為が行われている現場」であることには異論がなかろう。

 ところが、ミサイルの発射地点でも「現に戦闘行為が行われている現場」に該当しない場合があり得ると政府が解釈していることが、筆者の情報公開請求で開示された「想定問答集」から明らかになった。

 この「想定問答集」は外務省が開示したものだが、安保関連法案の関係省庁が所管の事項についてそれぞれ回答を作成し合本の形にしたものだ。作成日時の明記がなかったが、2015年5月16日付の開示請求で特定されたので(実際に開示されたのは最近だが、「想定問答集」自体は開示請求日以前に作成済みであったことになる)、国会審議に備えて上程前に作成されたものと思われる。

 「想定問答集」では、「他国部隊がミサイル攻撃を行っている場合、『現に戦闘行為が行われている現場』とは発射地点か、それとも着弾地点か」という自問自答を行っている。

 これには、ミサイルの発射及び着弾地点共に「現に戦闘行為が行われている現場」に該当すると回答している。

 ところが、「当該ミサイルの発射地点が『現に戦闘行為が行われている現場』とならない場合はあるのか」という更問いを作成して、こちらでは以下のびっくり解釈でそれを肯定する回答を行っているのだ。

(1) 一般論として、ミサイルが発射後に人による誘導などの行為による作用を受けることなく自動的に目標に正確に到達して爆発する構造である場合、当該ミサイルの発射自体が戦闘行為、すなわち、人を殺傷し又は破壊する行為に当たると考えられます。
(2) 他方、発射後に人の誘導などを受けて初めて目標に到達して爆発するようなミサイルについては、その発射自体が直ちに人を殺傷し又は物を破壊する行為には当たらず、そのようなミサイルの発射地点は「現に戦闘行為が行われている現場」に該当しないと考えられます。

 (2)の論理に従えば、発射後に人の誘導などを受けて初めて目標に到達して爆発するようなミサイル(注1)であれば、自衛隊は発射地点までそうしたミサイルの輸送や提供(注2)が可能となる。

 安倍政権はこうした論理を国会審議ではひた隠しにしたまま、安保関連法案を成立させたのである。現実に法律が発動されれば、上記の解釈で「現に戦闘行為が行われている現場」には該当しないとして、自衛隊に発射地点までミサイルを輸送させる腹積もりなのだ。

 もちろん、こうした理屈が国際社会に通用するはずがない。いかなる誘導方式のミサイルであれ、その発射地点は間違いなく「現に戦闘行為が行われている現場」と国際社会(当然紛争相手国も)は見なす。

 自衛隊のリスクが飛躍的に高まることは確実だ。

(注1) 具体的にどのようなミサイルがこれに該当するのか「想定問答集」では示していないが、衛星経由のデータ・リンクで発射後の攻撃目標の変更・再設定が可能なトマホーク巡航ミサイルを念頭に置いているものと推測される。
(注2) 厳密には、米軍などが保有するミサイルの輸送を自衛隊が引き受ける場合(輸送)と、自衛隊の持つミサイルを米軍などに提供する目的で自衛隊が輸送する場合(提供)とに区分される。

最終更新:6月2日(木)12時0分

ニュースソクラ